「弁護士=年収2000万円」というイメージは根強いものの、実際にそこへ届く人は弁護士全体のなかでは決して多数派ではありません。しかも検索者が思い描く「2000万円」が、事務所からの売上(収入)なのか、経費を引いた手取り(所得)なのかで、必要なハードルはまったく変わります。
この記事では、日弁連の弁護士白書をはじめとする一次データをもとに、
- そもそも2000万円に届く弁護士はどのくらいいるのか
- 届く人に共通する働き方とルート
- 採用する事務所・企業が高年収人材に何を求めているか(採用側の本音)
- 2000万円級の求人にたどり着くための転職エージェント活用法
までを、初心者にもわかるように整理しました。読み終えるころには、自分が今の立ち位置から2000万円に現実的に届くのか、何をすべきかが具体的に見えるはずです。
この記事の要点(3行)
- 「年収2000万円」は収入か所得かで難易度が激変。所得2000万円超はかなりの上位層。
- 五大事務所・渉外/企業法務・インハウス役員・独立・ダブルライセンスの5ルートが王道。
- 2000万円級求人の多くは非公開。採用側の評価基準を押さえ、専門エージェントを使うのが近道。
目次
弁護士の年収2000万円は「収入」か「所得」かで意味がまるで違う
「弁護士で年収2000万円」と聞いたとき、多くの人は手元に2000万円残るイメージを持ちます。でも、弁護士のお金の話では「収入」と「所得」を分けて考えないと、目標のハードルを大きく見誤ります。まずはこの2つの違いを押さえましょう。ここを混同したまま記事を読むと、データの読み方を間違えてしまうからです。
「収入(売上)」と「所得(手取り)」はどう違う?
弁護士の世界では、「収入」と「所得」はまったく別物として扱われます。収入とは、弁護士の仕事を通じて入ってくる総額、いわば売上のことです。一方の所得は、その収入から事務所の家賃・人件費・会費・交通費などの必要経費を差し引いて、手元に残った金額を指します。
ここが会社員と大きく違うポイントです。会社員の「年収」はおおむね額面の給与額を意味しますが、弁護士は法律事務所に所属していても実質的に個人事業主として扱われるケースが多く、自分で経費を負担します。だから「収入2000万円」でも、経費を引いた所得は1000万円前後ということが普通に起こります。
つまり同じ「2000万円」でも、売上の2000万円と手取りの2000万円では、まったく難易度が違うのです。
日弁連白書に見る収入中央値1,500万円・所得中央値800万円
この違いは、公的なデータにもはっきり表れています。日本弁護士連合会の調査によると、弁護士の収入は平均値が約2,082万円、中央値が1,500万円でした。これに対して、経費を引いた所得は平均値が約1,022万円、中央値は800万円にとどまります。[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
注目したいのは、収入の平均値が中央値より大きく上にあることです。これは、ごく一部の超高収入の弁護士が平均を引き上げているサインで、「平均年収=普通の弁護士の年収」ではないことを意味します。
実態に近いのは、上から数えても下から数えても真ん中に位置する「中央値」のほうです。収入で1,500万円、手取りベースの所得では800万円——これが弁護士の“ふつう”の感覚に近い数字だと考えてください。
「売上2000万円」なら中堅、「手取り2000万円」なら上位層
この数字を踏まえると、目標の「2000万円」がどの位置にあるかが見えてきます。収入(売上)で2000万円なら、平均値が約2,082万円ですから、ちょうど平均ラインのあたり。決して珍しくはなく、経験を積んだ中堅弁護士なら十分に射程に入る水準です。
一方で、所得(手取り)で2000万円となると話は別格です。所得の中央値は800万円、平均でも約1,022万円ですから、手取り2000万円は平均の倍近くに当たります。
経費を差し引いてなお2000万円が手元に残るということは、売上ベースでは3000万円〜4000万円以上を稼いでいる計算になり、これは弁護士全体のなかでもかなりの上位層です。同じ「2000万円」でも、見ている景色がまったく違うわけです。
あなたがイメージする2000万円はどちらか
だからこそ、記事を読み進める前に「自分の目指す2000万円はどっちなのか」を一度はっきりさせておくのがおすすめです。手取りで2000万円欲しいのか、売上で2000万円を立てたいのか。これによって、選ぶべきキャリアも、必要な戦略もガラリと変わります。
たとえば手取り重視なら、経費の負担が少なく給与として受け取れるインハウス(企業内弁護士)の上位ポジションや、大手事務所のパートナーが現実的です。逆に売上の規模を伸ばしたいなら、独立して案件を増やす道もあります。
本記事ではこのあと、まず「2000万円に届く人がどれくらいいるのか」をデータで確認し、その後で具体的なルートと、採用する側が高年収人材に何を求めているかまで掘り下げていきます。
データで見る|弁護士で年収2000万円に届く人はどれくらい?
「弁護士はみんな2000万円くらい稼いでいる」というイメージは、残念ながら現実とはズレています。ここでは公的データをもとに、弁護士全体の年収分布と、2000万円に届く人がどのくらいの割合なのかを冷静に見ていきましょう。
自分の立ち位置を測るうえで、いちばん大事なパートです。
弁護士全体の平均年収・中央値(弁護士白書2023年版)
あらためて整理すると、弁護士白書2023年版での弁護士全体の収入は、平均値が約2,082万円、中央値が1,500万円。所得は平均値が約1,022万円、中央値が800万円でした。
[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
ここで一度、よく比較に使われる別の統計にも触れておきます。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、弁護士を含む「法務従事者」の平均年収は約765万円とされ、白書の数字とは大きな開きがあります。これは調査の対象が違うためで、賃金構造基本統計調査は企業に雇われている労働者が中心。独立開業している弁護士や個人事業主に近い勤務弁護士は対象から外れやすく、結果として低めに出ます。
[参照元]賃金構造基本統計調査|厚生労働省
どちらの数字が正しい・間違っているという話ではなく、「弁護士の年収」と一口に言っても、母集団しだいで数字は大きく変わるということ。この記事では、独立・勤務・インハウスを幅広く含む日弁連白書を軸に話を進めます。
年収1,000万円以上は約7割という事実
「弁護士は稼げなくなった」とよく言われますが、収入ベースで見るとそうとも言い切れません。弁護士白書2023年版の収入分布を見ると、年収(収入)1,000万円以上の弁護士は全体の約7割を占めています。
[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
つまり、売上ベースで見れば弁護士は依然として高収入の職業です。ただし、ここでもう一度「収入と所得の違い」を思い出してください。1,000万円以上というのはあくまで売上の話で、経費を引いた手取りはもっと小さくなります。
「7割が1,000万円超」という見出しだけを見て安心するのは早計で、手元にいくら残るかは働き方しだい、という前提を忘れないようにしましょう。
所得2,000万円超はどのくらい少数か
では、本当に知りたい「2000万円」はどうでしょうか。収入(売上)2,000万円なら、平均値が約2,082万円なので平均前後の中堅ゾーン。届いている人もそれなりにいます。
問題は所得(手取り)の2,000万円です。所得の中央値は800万円、平均でも約1,022万円。手取り2,000万円というのは、この平均のおよそ2倍に当たります。
[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
参考に、企業内弁護士(インハウス)の年収分布を見てみると、その希少さがよりイメージしやすくなります。日本組織内弁護士協会(JILA)の調査では、企業内弁護士のうち年収2,000万〜3,000万円未満は6.4%、3,000万〜5,000万円未満は3.0%、5,000万円以上は1.1%でした。
[参照元]日本組織内弁護士協会(JILA)
インハウスは比較的安定して給与を受け取れる働き方ですが、それでも2,000万円以上に届くのは1割前後。手取りで2,000万円を狙うなら、相応の戦略とポジションが必要だとわかります。
経験年数別に見る年収の上がり方(5年未満〜25年)
もうひとつ大事なのが、年収は経験年数とともに大きく伸びるという事実です。弁護士白書2023年版の経験年数別の平均収入を見ると、おおよそ次のように推移します。
- 経験5年未満:約575万円
- 経験5〜10年:約1,252万円
- 経験10〜15年:約1,975万円
- 経験15〜20年:約2,554万円
- 経験20〜25年:約3,763万円(ピーク)
- 経験25〜30年:約3,220万円
- 経験35年以上:約1,937万円
[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
収入ベースで見れば、経験15〜20年あたりで平均が2,500万円を超え、20〜25年でピークを迎えます。逆に言うと、若手のうちは平均でも500万〜1,000万円台で、いきなり2000万円に届くわけではありません。2000万円は「時間をかけて経験と実績を積み上げた先にある数字」だという感覚を持っておくと、キャリア設計がぶれにくくなります。
「2000万〜3000万が多い」は誤解?知恵袋の疑問に答える
ネット上の質問サイトでも、「弁護士の年収って2000万〜3000万円が多いの?」「2000万円っていきやすい?」といった声がよく見られます。結論から言うと、収入(売上)2000万円台は経験を積んだ層では珍しくない一方、所得(手取り)で2000万〜3000万円が“多数派”ということはありません。むしろ少数の上位層です。
ただ、「絶対に無理」という話でもありません。実際、頑張りしだいで30代で売上2,000万円台に乗せる弁護士もいます。要は、何のルートを選び、どんな専門性を磨くかで到達スピードと天井が変わるということ。次の章では、その2000万円に届くための具体的な5つのルートを見ていきましょう。
年収2000万円に届く弁護士の5つのルート
ここからは具体論です。2000万円に届いている弁護士は、だいたい次の5つのどれか(または組み合わせ)の道を歩んでいます。どのルートにも向き不向きがあるので、自分の志向と照らし合わせながら読んでみてください。
なお金額は基本的に「収入(売上)」ベースで、所得(手取り)はそこから経費を引いた額になる点は引き続き意識してください。
ルート1:五大・大手法律事務所でパートナーを目指す
王道中の王道が、五大法律事務所(西村あさひ/アンダーソン・毛利・友常/長島・大野・常松/森・濱田松本/TMI総合)に代表される大手で、アソシエイトからパートナーへ昇格していく道です。
報酬水準はとにかく高く、1年目から年収1,000万〜1,200万円が相場とされ、一般的な事務所の1年目600万円前後と比べると約2倍。経験3年で1,300万〜1,500万円、5年で1,600万〜2,000万円に達するケースもあり、シニアアソシエイトでは1,500万〜3,000万円、共同経営者であるパートナーになれば数千万円から億単位も現実的です。
つまり、五大に在籍できれば「収入2000万円」はキャリアの途中で自然に通過するライン。ただし入所のハードルは非常に高く、難関法科大学院の修了か予備試験合格が現実的な前提になります。そして何より激務です。
海外との時差対応で深夜の打ち合わせが入ることも多く、体力勝負の面もあります。高収入と引き換えに、ワークライフバランスは犠牲になりやすいルートだと理解しておきましょう。
ルート2:渉外・企業法務・M&Aで専門特化する
事務所の規模そのものより「分野」で勝負するのがこのルートです。渉外(クロスボーダー)案件や企業法務、M&A、ファイナンス、知的財産といった分野は、扱う案件の金額が大きく、報酬単価も高くなりやすいのが特徴です。
中規模の事務所でも、渉外案件やM&A案件を主力にしているところは、五大に近い水準を提示していることがあります。とくに英語を使う国際案件をこなせる弁護士は希少性が高く、外資系法律事務所では日系よりも高い報酬が設定される傾向があります。「どこの事務所にいるか」だけでなく「何ができるか」で年収が決まる典型例です。
逆に、債務整理や交通事故といった個人向けの定型業務は単価が下がりやすく、件数をこなさないと年収が伸びにくい。2000万円を狙うなら、需要が強く単価の高い専門分野を早めに見極めて、そこで一目置かれる存在になることが近道になります。
ルート3:インハウスローヤーで管理職・役員になる
企業内弁護士(インハウスローヤー)として、法務部門の管理職やリーガルヘッド、執行役員クラスを目指すルートです。事務所の弁護士に比べると報酬の天井は低めですが、給与として安定的に受け取れ、経費負担が小さいぶん「手取り(所得)」では効率がよいという見方もできます。
ただし、インハウス全体で見ると2000万円超は決して多数派ではありません。日本組織内弁護士協会(JILA)の調査では、企業内弁護士で年収2,000万〜3,000万円未満は6.4%、3,000万円以上はさらに少数でした。
[参照元]日本組織内弁護士協会(JILA)
一般のメンバークラスでは1,000万〜1,500万円が中心ゾーン。2000万円を超えてくるのは、上場企業やグローバル企業のリーガル責任者、複数法域を束ねるディレクターといった上位ポジションです。安定と働きやすさを重視しつつ高年収も狙うなら、「管理職以上に上がれる規模・業種の企業を選ぶ」ことが鍵になります。
ルート4:独立開業して顧問契約・高単価分野を取る
自分の事務所を構え、案件を直接受任して売上を伸ばすのが独立開業ルートです。収入の天井がなく、当たれば一気に2000万円超も狙える一方、軌道に乗るまでは収入が不安定になりやすいハイリスク・ハイリターンな道です。
弁護士白書のデータでも、収入は経験を積むほど伸び、経験20〜25年で平均約3,763万円とピークを迎えます。これは独立してクライアントと信頼関係を築き、案件を積み上げてきた弁護士が多く含まれる層です。
[参照元]統計・調査(弁護士白書等)|日本弁護士連合会
独立で2000万円に届く人の共通点は、単発で終わるスポット案件だけに頼らず、企業との顧問契約のように継続的に収益が積み上がる仕組みを持っていること。1件あたりの単価が高く、かつリピートや紹介が回る分野(企業法務・顧問・特定の専門領域)を選べているかどうかで、結果が大きく変わります。集客や営業の力も問われるルートです。
ルート5:ダブルライセンス・スキルの掛け合わせ
最後は、弁護士資格に別の専門性を掛け合わせて希少価値を高めるルートです。たとえば弁護士+公認会計士、弁護士+税理士、弁護士+ビジネス(MBA・経営)、あるいは特定業界(IT・医療・不動産・金融)の深い知見など、「弁護士なら誰でも持っている」わけではない武器を加えるイメージです。
掛け合わせがうまくいくと、他の弁護士では対応できない領域を一手に引き受けられるようになり、単価も指名も上がります。M&Aや事業再生、税務争訟、知財×ビジネスといった複合領域は、まさにこの掛け合わせが効く分野です。
地道に資格や知識を積み上げる必要はありますが、レッドオーシャンの一般業務で消耗するより、ニッチで高単価なポジションを確立するほうが2000万円への距離は近くなることが多いです。自分の経歴やバックグラウンドに、すでに掛け合わせの種がないか棚卸ししてみるとよいでしょう。
ルート別|何年目で・どのくらいの確率で届くか
ざっくり整理すると、最短で届きやすいのは五大・大手のルートで、在籍できれば経験5年前後で収入2000万円が見えてきます。ただし入所と昇格のハードルが高く、誰でも入れるわけではありません。
渉外・専門特化やダブルライセンスは、5〜10年かけて武器を磨けば中規模事務所でも2000万円が射程に入ります。独立は当たれば早いものの不安定で、平均で2000万円超が見えてくるのは経験15年以降というのが白書の数字感です。インハウスは安定する反面、2000万円超は管理職・役員クラスに限られ、割合としては1割前後にとどまります。
共通して言えるのは、若手のうちにいきなり届く数字ではないこと。そして「収入」で2000万円か「所得」で2000万円かによって、必要なルートも年数もまったく変わるということです。自分がどのルートに適性があるかを早めに見定め、そこへ資源を集中させるのが、遠回りしないコツです。
2000万円に到達した3つのモデルケース
イメージを具体化するために、2000万円に届いた典型的なパターンを3つ紹介します。あくまでモデルケースですが、自分に近い道筋を探す参考にしてください。
ケース1:五大事務所のシニアアソシエイト(30代前半)
難関法科大学院を経て五大事務所に入所。1年目から年収1,000万円超でスタートし、企業法務・M&A案件で経験を積んで、入所5〜7年でシニアアソシエイトに。年収は2,000万円前後に到達しました。激務ではあるものの、専門性とブランドが身につき、その後のパートナー昇格・独立・インハウス転身いずれにも進める強い土台を得ています。最短距離型の典型です。
ケース2:渉外分野で専門特化した中堅弁護士(30代後半)
中規模の企業法務系事務所で、クロスボーダーのファイナンス案件に特化。英語での契約交渉力を武器に希少性を高め、より条件のよい事務所へ戦略的に転職して年収2,000万円台に。事務所の規模ではなく「単価の高い分野で一目置かれる存在になる」ことで到達したパターンです。
ケース3:上場企業のリーガルヘッド(40代)
事務所勤務で企業法務の経験を積んだ後、事業会社のインハウスへ転身。法務部門のマネジメントとM&A・海外案件を牽引した実績を評価され、上場企業の法務責任者(執行役員クラス)に昇格して年収2,000万円超に。経費負担が小さく給与で受け取れるため、手取り(所得)ベースでも効率がよいのが特徴です。安定と高年収を両立した型といえます。
これらに共通するのは、①需要の強い分野を選び、②そこで「自分にしかできない」と言われる専門性を築き、③それを最も高く評価してくれる環境へ動いている点。年数や所属はバラバラでも、この3ステップは共通しています。
自分に合うルートの選び方(タイプ別)
5つのルートのうち、どれを選ぶべきかは「何を優先したいか」で決まります。タイプ別に整理すると、次のように考えると選びやすくなります。
- とにかく早く・確実に高年収へ → 五大・大手ルート:入所のハードルは高いものの、在籍できれば年収は自動的に上がります。激務を受け入れられる人向け。
- 専門性で勝負したい・規模に縛られたくない → 渉外/専門特化・ダブルライセンスルート:単価の高い分野で一目置かれる存在を目指す。手に職をつけて市場価値で勝負したい人向け。
- 安定と働きやすさも両立したい → インハウス管理職ルート:給与で受け取れて手取り効率がよい。組織のなかでマネジメントしていきたい人向け。
- 上限なく稼ぎたい・裁量がほしい → 独立開業ルート:当たれば青天井だが不安定。営業や経営も含めて自分でやりたい人向け。
迷ったときは、「収入の上限」と「安定・働きやすさ」のどちらをより重視するかを軸に考えると、選択肢がしぼれます。そして、ひとつに決め打ちせず、たとえば「30代は大手で専門性を磨き、40代で独立」のように、年代に応じてルートを乗り換える発想も有効です。
年代別|年収2000万円を目指すロードマップ(20代・30代・40代)
同じ「2000万円を目指す」でも、20代・30代・40代では取るべき動き方が変わります。年代ごとに「今いちばん投資すべきもの」が違うからです。自分の年代に合わせて、何を優先すべきかを確認しておきましょう。
20代|土台づくりの時期|分野選びと“稼げる経験”の蓄積
20代は、いきなり年収を追うより「2000万円に届くための土台」を固める時期です。具体的には、需要が強く単価の高い分野(企業法務・M&A・ファイナンス・知財など)に早めに身を置き、質の高い案件を経験することが将来の年収を大きく左右します。
弁護士白書のデータでも、経験5年未満の平均収入は約575万円。この時期の年収そのものは高くありませんが、ここでどんな事務所・分野を選ぶかが、30代以降の伸びを決めます。
可能なら五大・準大手や、渉外・企業法務に強い事務所で“鍛えられる経験”を積むのが理想。目先の数十万円の差より、5年後に2000万円へ向かえるスキルが身につくかどうかで職場を選ぶと、結果的に近道になります。
30代|伸び盛りの時期|専門性の確立と戦略的な転職
30代は、20代で蓄えた経験を「市場価値」に変え、年収を一気に伸ばせる時期です。弁護士白書では経験10〜15年で平均収入が約1,975万円と、ちょうど2000万円が視界に入ってきます。
この年代でやるべきは、特定分野で「この人に頼みたい」と言われる専門性を確立すること、そして必要なら戦略的に転職して環境を変えることです。今の事務所で頭打ちを感じるなら、より単価の高い分野や、評価制度の整った事務所・企業へ移ることで年収が跳ね上がるケースは珍しくありません。
インハウスで管理職を目指すなら、マネジメント経験を積めるポジションに動くのもこの時期。30代は「動けば変わる」年代なので、エージェントに市場価値を確認しておく価値が高いです。
40代以降|実績で勝負する時期|独立・パートナー・役員クラス
40代以降は、これまでの実績と人脈が年収に直結する時期です。弁護士白書では経験15〜20年で平均収入が約2,554万円、20〜25年で約3,763万円とピークを迎えます。ここまで来ると、2000万円超は「実績がある人にとっては十分に現実的なライン」になります。
この年代の選択肢は、パートナーへの昇格、顧客基盤を持っての独立開業、事業会社のリーガルヘッドや役員クラスへの転身など。いずれも「自分で案件・価値を生み出せるか」が問われます。
逆に、特定の強みを築けないまま来てしまうと、年収が伸び悩むこともある年代。これまでの経験の棚卸しをして、「自分の最大の武器は何か」を明確にし、それを最も高く評価してくれる場所を選ぶことが、2000万円到達の決め手になります。
【採用する側の本音】事務所・企業は2000万円級に何を求めるか
ここは他の記事ではあまり語られない、採用する側の視点です。年収2000万円という金額は、事務所や企業からすれば「それだけの投資に見合うリターンを出せる人材か」をシビアに見極めるラインでもあります。
出す側が何を見ているかを知ると、自分が何を磨けばよいかが逆算でわかります。
法律事務所が高額報酬を出すパートナー・即戦力の条件
法律事務所がアソシエイトやパートナーに高い報酬を出すとき、最終的に見ているのは「この人は事務所にいくら稼いでくれるか」です。とくにパートナーは共同経営者ですから、自分で案件を取ってこられる集客力(クライアントを連れてこられるか、新規開拓できるか)が決定的に重要になります。
中途採用で2000万円超のオファーが出るのは、特定分野で実績があり、すぐに案件を回せる即戦力か、あるいは顧客基盤(いわゆる「客付き」)を持っている弁護士です。
逆に、優秀でも「指示がないと動けない」「自分で仕事を生み出せない」タイプは、アソシエイトの天井あたりで頭打ちになりやすい。事務所側は「処理能力」だけでなく「収益を生み出す力」を見ている、というのが本音です。
事業会社がリーガルヘッドに2000万円超を出す基準
事業会社がインハウスに2000万円超を出すのは、ほぼ管理職・役員クラスに限られます。このとき企業が評価するのは、法律知識そのものよりも「経営の意思決定に法務の立場から関与できるか」です。
具体的には、法務部門のマネジメント経験、M&Aや海外進出など重要プロジェクトを法務面で牽引した経験、英語での契約交渉力、そして「リスクを指摘するだけでなく、事業を前に進めるための現実解を出せるか」といったビジネス感覚。単なる契約書チェック要員ではなく、経営に近いポジションで価値を出せる人材にこそ、企業は高い報酬を払います。
法律事務所からインハウスに移ると年収が下がるケースが多いと言われるのも、企業側が「役員クラスでなければそこまでは出さない」と考えているからです。
採用側が「年収に直結する」と見るスキル
事務所・企業のどちらにも共通して、年収に直結すると見られているスキルがあります。整理すると次のとおりです。
- 専門性の深さ:M&A・ファイナンス・知財・税務争訟・労働など、強い需要のある分野で「この人に頼みたい」と言われる専門領域を持っているか
- 語学力・国際対応力:英語で契約交渉や海外案件をこなせるか。希少性が高く、報酬に跳ね返りやすい
- 案件創出力・営業力:自分で仕事を取ってこられるか。とくにパートナー・独立で決定的
- マネジメント経験:チームや部門を率いた経験。インハウスの管理職昇格に直結
- ビジネス理解:法律論だけでなく、事業や経営の文脈で判断できるか
これらは「資格を持っている」だけでは身につきません。逆に言えば、ここを意識的に伸ばせば、採用側からの評価=オファー年収は着実に上がっていきます。
2000万円級の求人がほとんど表に出ない理由
最後に重要な事実を。2000万円級の高年収求人は、そのほとんどが一般の求人サイトには出てきません。理由は採用側の事情にあります。高額ポジションは「誰でも応募できる形」で公開すると応募が殺到して選考コストが膨らむうえ、現職者の処遇との兼ね合いや経営の機密にも関わるため、表沙汰にしたくないのです。
そのため、こうした求人は転職エージェントが抱える「非公開求人」として、条件に合う候補者にだけ個別に紹介される形で動きます。
つまり、自分でいくら求人サイトを探しても、2000万円級のポジションにはそもそも出会いにくい構造になっている、ということ。次の章では、この非公開求人にアクセスするための転職エージェント活用法を解説します。
弁護士が年収2000万円を目指すなら登録をおすすめする転職エージェント
前章で触れたとおり、高年収の求人ほど表に出てきません。だからこそ、2000万円級のポジションを狙うなら、こうした非公開求人を多く持つ転職エージェントを使うのが現実的な近道になります。
ここでは弁護士・法務・管理部門に強い主要エージェントを紹介します。複数登録して比較するのが鉄則です。
NO-LIMIT(ノーリミット)
NO-LIMIT(ノーリミット)は、弁護士・法務人材に特化した転職エージェントです。運営は東証グロース上場の株式会社アシロ。法律業界に精通したアドバイザーが、大手法律事務所の代表クラスとも関係を築いており、表に出にくいハイクラス・高年収の求人にアクセスしやすいのが強みです。
弁護士のキャリアを熟知したコンサルタントが、現在の経験やスキルから「どのルートなら2000万円が狙えるか」を一緒に整理してくれます。
ワークライフバランスを保ちつつ年収を上げたい人、五大・大手や専門特化事務所への移籍を考える人まで、幅広く相談できます。弁護士の高年収転職を考えるなら、まず押さえておきたい一社です。
公式サイト:https://no-limit.careers/
弁護士ドットコムの弁護士キャリア
弁護士ドットコムキャリアは、国内最大級の法律ポータル「弁護士ドットコム」を運営する弁護士ドットコム株式会社(東証上場)による、弁護士・法務特化の転職エージェントです。
最大の強みは、ポータルサイトや企業法務メディア「BUSINESS LAWYERS」、電子契約「クラウドサイン」などを通じて築いた、法律事務所・企業との独自ネットワーク。
これを活かした非公開求人を多数保有しており、年収800万円以上のハイクラス層の支援実績も豊富です。とくに企業内弁護士(CLO候補・法務部長候補)といった、年収2000万円級につながる重要ポジションの求人に出会いやすいのが魅力。上場企業運営という安心感もあり、NO-LIMITとの併用先として有力です。
公式サイト:https://career.bengo4.com/
MS-Japan
MS-Japan(株式会社MS-Japan・東証上場)は、士業・管理部門(バックオフィス)特化で長い実績を持つ転職エージェントです。弁護士はもちろん、経理・財務・人事・法務といった管理部門全般に強く、事業会社のインハウス求人の層が厚いのが特徴です。
「事務所からインハウスに移って、いずれリーガルヘッドや役員クラスを目指したい」という人にとっては、相性のよいエージェントです。管理職以上の高年収ポジションや、上場・グローバル企業の法務求人を多く扱っており、インハウスルートで2000万円を狙う場合の選択肢が広がります。
コーポレート部門のキャリア全体を見渡してアドバイスしてもらえる点も心強いところです。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
BEET-AGENT|法務・バックオフィス特化
BEET-AGENT(ビートエージェント)は、法務・管理部門に特化した転職エージェント。企業の法務・バックオフィス求人に強みを持ち、事業会社で法務キャリアを築きたい人に向いています。
インハウス志向で、法務部門の中核人材や管理職を目指す人にとって、専門性の高いサポートが受けられます。アシログループとして弁護士・法務領域の知見が蓄積されているため、「事務所勤務から事業会社の法務へ」「法務として管理職・高年収を狙う」といった相談に具体的に応えてくれます。
NO-LIMIT(事務所・弁護士寄り)と組み合わせると、事務所系と事業会社系の両面から求人を比較できます。
公式サイト:https://beet-agent.com/
そのほかの比較エージェント(弁護士転職.jp/アガルートキャリア 等)
上記以外にも、弁護士・法務向けのエージェントは複数あります。比較検討の選択肢として押さえておくとよいでしょう。
- 弁護士転職.jp:C&Rリーガル・エージェンシー社が運営する、弁護士特化の老舗エージェント。法律事務所の求人に強く、転職成功談などの情報発信も豊富です。
- アガルートキャリア:資格スクールのアガルートに関連する株式会社ファンオブライフが運営。受験指導で培った専門知識を背景に、若手・有資格者のキャリア支援を行っています。
エージェントは1社に絞らず、特化型を2〜3社併用して、求人の幅とアドバイスの質を見比べるのがおすすめです。
失敗しないエージェントの選び方・使い方
最後に、使い方のコツを整理します。まず、弁護士・法務に「特化した」エージェントを選ぶこと。総合型の大手だけだと、専門職ならではの事情を理解した提案が受けにくいためです。次に、複数社に登録して比較すること。担当者との相性や、紹介される求人の質には差があります。
そして、最初の面談で「収入か所得か、どちらで2000万円を目指したいのか」「ワークライフバランスはどこまで譲れるか」を率直に伝えること。
希望が明確なほど、エージェントも的確な非公開求人を出しやすくなります。年収交渉もプロに任せたほうが好条件を引き出しやすいので、遠慮せず相談しましょう。
年収2000万円の「その先」|目指す前に知っておきたい注意点
最後に、2000万円を目指す前にぜひ知っておいてほしい現実的な注意点をまとめます。年収はキャリアの大事な要素ですが、それだけで決めると後悔することもあります。
激務・労働時間とのトレードオフ
高年収の多くは、相応の業務量と引き換えに成り立っています。五大事務所では深夜・休日の業務が続くことも珍しくなく、独立で稼ぐ人も案件と経営の両方を抱えて働きづめになりがちです。2000万円という数字の裏側には、長時間労働や強いプレッシャーがあることが多い、という前提は押さえておきましょう。健康や家庭との両立を犠牲にしすぎないバランス感覚が大切です。
収入が増えても手取り(所得)は思うほど伸びない(税・社保)
記事の冒頭で触れた「収入と所得」の話は、税金の面でも効いてきます。日本の所得税は累進課税なので、収入が増えるほど高い税率がかかり、社会保険料の負担も重くなります。
独立している場合は経費もかかります。そのため、「収入が2000万円に増えたのに、手元に残るお金は思ったほど増えない」という感覚になりがちです。年収アップを目指すときは、額面だけでなく「最終的に手元にいくら残るか」で考える習慣をつけましょう。
働き方によっては収入が不安定になる
独立開業や歩合制の比重が高い働き方は、当たれば大きい一方、案件が途切れれば収入が大きく落ち込むリスクがあります。弁護士白書のデータでも、経験を積んだ層の収入は高いものの、その分散(人による差)は小さくありません。
安定を重視するなら勤務やインハウス、収入の上限を取りに行くなら独立、というように、自分のリスク許容度に合った働き方を選ぶことが大切です。
年収だけでキャリアを決めるリスク
最後に、いちばん伝えたいことです。年収2000万円はわかりやすい目標ですが、それ自体が目的化すると、興味のない分野で消耗したり、激務で体を壊したりと、長い目で見て後悔につながることがあります。
「どんな分野で・どんな働き方をして・何を実現したいのか」という軸があってこそ、年収アップも意味を持ちます。エージェントに相談する際も、金額だけでなく「自分が納得できるキャリア」をセットで考えると、ぶれない選択ができるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 弁護士はみんな年収2000万円くらい稼いでいるのですか?
いいえ、それは誤解です。弁護士白書2023年版では、収入(売上)の中央値は1,500万円、経費を引いた所得(手取り)の中央値は800万円でした。収入2000万円は平均前後の中堅ゾーンですが、所得2000万円となると平均の倍近くで、かなりの上位層になります。
Q2. 何年目くらいで年収2000万円に届きますか?
ルートによります。五大・大手事務所なら経験5年前後で収入2000万円が見えてきます。一方、独立で平均的に2000万円超が見えてくるのは経験15年以降というのが白書の数字感です。若手のうちにいきなり届く水準ではない、と考えておくとよいでしょう。
Q3. インハウス(企業内弁護士)でも2000万円は狙えますか?
狙えますが、多数派ではありません。JILAの調査では、企業内弁護士で年収2,000万〜3,000万円未満は6.4%でした。2000万円超は、上場・グローバル企業のリーガルヘッドや役員クラスなど、管理職以上のポジションが中心です。
Q4. 「収入」と「所得」はどう違うのですか?
収入は仕事を通じて入ってくる総額(売上)、所得はそこから経費を引いて手元に残った金額(手取り)です。弁護士は事実上の個人事業主として経費を負担するケースが多く、収入2000万円でも所得は1000万円前後ということが普通に起こります。
Q5. 年収2000万円級の求人はどこで見つかりますか?
こうした高年収ポジションの多くは一般の求人サイトには公開されず、転職エージェントの非公開求人として動きます。弁護士・法務特化のエージェントに登録し、条件に合う求人を紹介してもらうのが現実的な方法です。
Q6. 転職エージェントは1社だけ使えばいいですか?
2〜3社の併用がおすすめです。担当者との相性や紹介される求人の質には差があるため、複数を比較したほうが選択肢が広がり、年収交渉でも有利になりやすいです。弁護士特化(NO-LIMITなど)と管理部門特化(MS-Japanなど)を組み合わせると、事務所系・事業会社系の両面を比較できます。
Q7. 地方の弁護士でも年収2000万円は可能ですか?
可能ですが、東京・大阪など大都市のほうが大型案件や高単価分野の求人が多く、相対的に届きやすい傾向があります。地方では、特定分野で地域一番の存在になる、顧問契約を積み上げるといった独立戦略が現実的な選択肢になります。
Q8. 激務を避けつつ年収2000万円を目指すことはできますか?
簡単ではありませんが、専門特化やダブルライセンスで「単価の高い仕事を効率よくこなす」方向なら可能性はあります。働き方と年収のバランスは人それぞれなので、エージェントに「どこまで激務を許容できるか」を伝えたうえで、現実的な落としどころを一緒に探すのがおすすめです。
まとめ:今すぐできる3つのアクション
弁護士の年収2000万円は、「収入か所得か」で難易度が大きく変わります。収入(売上)2000万円なら経験を積んだ中堅の射程ですが、所得(手取り)2000万円はかなりの上位層。まずは自分の目指す2000万円がどちらなのかをはっきりさせることが出発点です。
そのうえで、五大・大手/専門特化/インハウス管理職/独立/ダブルライセンスという5つのルートから、自分の適性に合う道を選び、採用側が評価する専門性・語学力・案件創出力・マネジメント経験を磨いていく。そして、高年収求人の多くは非公開なので、弁護士・法務特化のエージェントを使って非公開求人と市場価値の客観評価にアクセスする——これが2000万円への最短ルートです。
最後に、今すぐできる3つのアクションを挙げておきます。
- 自分の「2000万円」が収入か所得かを決める — ゴールが定まると選ぶべきルートが見えます。
- 5つのルートから適性に合う道を1〜2つ選ぶ — 全部を追わず、強みを集中させましょう。
- 弁護士・法務特化エージェントに2〜3社登録して相談する — 非公開求人と客観的な市場価値を把握する第一歩です。
年収はあくまで、自分が納得できるキャリアを実現するための手段のひとつ。数字に振り回されず、「どんな弁護士でいたいか」という軸とセットで、自分に合った道を選んでいってください。