「40代で人事の転職って、正直もう遅いんじゃないか…」
そんな不安を抱えている方は少なくないでしょう。かつては「転職は35歳まで」と言われた時代もありました。しかし近年、その常識は大きく変わりつつあります。
マイナビの「転職動向調査2025年版」によると、2024年における40代の転職者比率は前年より上昇し、とくに40代男性は転職による平均年収の増加額が全世代で最も高い34.4万円という結果が出ています。
【参照元】転職動向調査2025年版(2024年実績) | マイナビキャリアリサーチLab
人事という職種は、経験の蓄積がそのまま市場価値に直結する領域です。採用戦略の立案、人事制度の設計、組織開発の推進──。これらの経験を持つ40代の人事経験者を求める企業は確実に増えています。
ただし、20代・30代とは異なる「40代ならではの戦略」が必要になるのも事実です。本記事では、40代人事の転職市場の最新動向、年収データ、領域別のキャリア戦略、そして転職を成功に導く具体的なステップまで、管理部門の転職事情に精通した視点から徹底的に解説します。
3行要約
- 40代人事の転職市場は追い風──求人増加・年収アップの実績データが揃っている
- 成功のカギは「人事のどの専門性で勝負するか」を明確にすること
- 管理部門特化型エージェントの活用が、40代人事の転職成功率を大きく左右する
目次
40代人事の転職市場は本当に厳しい?最新データで読み解く実態
「40代の転職は厳しい」──インターネットで検索すると、こうした情報がたくさん出てきます。確かに20代・30代と比べれば、求人の母数が少なくなるのは事実です。
しかし、最新のデータを見ると、40代の転職市場は想像以上に変化しています。ここでは具体的な数字をもとに、40代人事の転職市場のリアルな姿を整理していきましょう。
35歳転職限界説は過去のもの──40代転職率の推移
「転職するなら35歳までに」──長く信じられてきたこの定説は、もはや過去のものになりつつあります。総務省「労働力調査」によると、2024年の転職者数は約331万人で、3年連続の増加となりました。
【参照元】労働のようす|総務省統計局
さらに注目すべきは年代別の動きです。マイナビの「転職動向調査2025年版」によれば、転職者に占める20代の比率は減少傾向にある一方で、30〜50代のミドル世代が占める比率は年々高まっています。とくに2024年は40代の比率が顕著に伸びました。
【参照元】【2025年最新】年代別の「転職率」と「転職理由」とは? | マイナビキャリアリサーチLab
こうしたデータが示しているのは、「40代だから転職できない」のではなく、「40代の転職市場が拡大している」という現実です。
40代人事の求人が増えている3つの背景
では、なぜ40代の人事経験者を求める企業が増えているのでしょうか。主に3つの要因があります。
①少子高齢化による人材獲得競争の激化
若年層の労働人口が減少し続ける中、企業は採用戦略そのものの高度化を迫られています。採用の質を上げるには、経験豊富な人事のプロが欠かせません。とくにダイレクトリクルーティングやスカウト業務をインハウス化する動きが広がっており、こうした領域で実績を持つ40代の人事経験者は引く手あまたです。
②「守りの人事」から「攻めの人事」へのシフト
多くの企業が、従来型の労務管理中心の人事から、経営戦略と連動した「戦略人事(HRBP)」へのシフトを進めています。人事制度の抜本的な見直し、エンゲージメント向上施策、タレントマネジメントの導入など、経営に直結する人事課題を任せられる人材として、40代のベテラン人事への期待が高まっているのです。
③スタートアップ・成長企業からのニーズ
スタートアップや成長フェーズにある企業では、人事制度が未整備なケースも少なくありません。評価制度の設計、研修体系の構築、労務コンプライアンスの整備など、ゼロからの仕組みづくりを任せられるシニアな人事経験者が求められています。
企業が40代の人事経験者に求めるものとは
40代の人事に対して、企業が期待するのは「即戦力」としてのパフォーマンスです。ただし、「即戦力」の中身は20代・30代とはまったく異なります。
企業が40代の人事に求めるのは、大きく3つのポイントに集約されます。
まず「特定領域の専門性」です。40代では「なんでもできます」という汎用的なアピールはむしろ逆効果になりがちです。採用なら採用、制度設計なら制度設計、労務なら労務と、特定分野での深い専門性と実績が問われます。
次に「マネジメント経験」です。人事チームや部門を統括した経験は、40代の転職市場における大きな武器です。何人規模のチームをマネジメントしたか、どのような成果を上げたかを具体的に語れるかどうかが、選考のカギを握ります。
そして「柔軟性と謙虚さ」です。とくに面接では、前職での地位やプライドにこだわらず、新しい環境に柔軟に適応できる姿勢があるかどうかを見られます。企業は「一緒に働きやすそうな人か」というスタンス面も重視しています。
40代人事の転職で「不利」になるケースとは
一方で、40代の人事転職が厳しくなるケースもあります。その典型が、経験領域が限定的すぎる場合と、市場感覚がアップデートされていない場合です。
たとえば「給与計算と勤怠管理だけを15年間やってきました」という経歴の場合、40代の年収水準で迎え入れるメリットを企業側が感じにくいのが現実です。人事DXの推進や制度改革など、プラスアルファの経験や視座がないと、市場での評価は上がりにくくなります。
また、転職市場のトレンドを把握しないまま動き始めてしまうのも失敗の原因です。在職中に転職エージェントやスカウトサービスに登録して情報収集を行い、自分の市場価値を客観的に把握することが、40代の転職では不可欠です。
40代人事の年収相場はどれくらい?企業規模・役職別に解説
40代の転職を考えるとき、「年収が下がるのではないか」という不安は誰しも抱えるものです。しかし、最新のデータからは意外な事実が見えてきます。ここでは40代人事の年収相場を、企業規模や役職の違いに分けて詳しく見ていきましょう。
40代人事の平均年収──管理職と非管理職の差
40代の人事職は、管理職か非管理職かで年収に大きな開きが出ます。
MS-Japanの「人事求人の想定年収調査2025」によると、40代の管理職ポジションは上場・大企業で年収800万円近くの水準が提示されており、人事制度の運用や部門マネジメントの経験があるかどうかが年収を分ける大きな要因になっています。一方、40代の非管理職の場合は、大規模上場企業で725万円程度、小規模未上場企業では500万円程度と、200万円以上の差が生まれることもあります。
【参照元】人事求人の想定年収調査 2025|年収から考えるキャリア戦略 | MS-Japan
つまり、40代の人事で年収の天井を突破するには、管理職としての経験を積むか、あるいは特定分野のスペシャリストとして市場から高く評価される実績を持つかの、いずれかのルートが求められるということです。
企業規模別の年収レンジ(大手上場・中堅・中小・スタートアップ)
40代人事の年収は、企業規模によっても大きく変わります。おおまかな目安は以下の通りです。
- 大手上場企業:700〜1,000万円(管理職クラス。制度設計・人事戦略の経験がある場合はさらに上振れ)
- 中堅企業(従業員300〜1,000名程度):550〜800万円(人事マネージャー〜部長クラスを想定)
- 中小企業(従業員300名未満):450〜650万円(一人人事や少人数チームでの幅広い実務を求められるケース多し)
- スタートアップ・IPO準備企業:500〜900万円(レンジが広い。ストックオプション付与のケースも)
特に注目したいのはスタートアップ・IPO準備企業です。人事制度をゼロから構築した経験や、上場審査対応の知見がある40代人事は、年収800万円超の条件を提示されることも珍しくありません。
転職で年収アップを実現した40代人事の共通点
マイナビの「転職動向調査2025年版」によると、転職後に年収が上がった割合は40代男性で47.9%に上り、平均年収の増加額も34.4万円と全世代で最高でした。
【参照元】転職動向調査2025年版(2024年実績) | マイナビキャリアリサーチLab
では、年収アップに成功した40代人事にはどんな共通点があるのでしょうか。転職エージェント各社の事例を総合すると、以下のパターンが浮かび上がります。
同職種×異業界での転職が、年収アップの王道パターンです。たとえば、メーカーの人事から食品商社の人事制度設計ポジションへ移るなど、人事の専門性は活かしつつ業界を変えることで、年収水準が切り上がるケースが多く見られます。
また、プレイングマネージャーからマネジメント専任への転職も年収が上がりやすいルートです。40代人事で年収750万円から800万円へアップした事例では、グループ企業を横断した採用・制度設計の経験と、役員や代表を巻き込んだプロジェクト推進の実績が高く評価されたという報告もあります。
年収を下げずに転職するために押さえたい交渉のポイント
40代の転職では、一時的に年収が下がることも想定しておく必要があります。ただし、年収ダウンを最小限に抑えるための工夫はいくつかあります。
まず、希望年収の「下限」と「理想」を事前に整理しておくことです。家族構成や住宅ローン、子どもの教育費など、生活に必要な最低ラインを明確にしたうえで交渉に臨むと、感情的な判断を避けられます。
次に、年収だけでなく「総報酬」で考えること。リモートワーク制度、退職金制度、ストックオプション、住宅手当などの福利厚生を含めたトータルの条件で比較することで、見かけの年収ダウンが実質的には好条件という場合もあります。
そして、転職エージェントの条件交渉力を活用することです。とくに管理部門に特化したエージェントは、企業側の予算感や交渉の余地を把握しているため、個人で交渉するよりも有利な条件を引き出しやすくなります。
「人事のどの領域で勝負するか」が成否を分ける──4つのキャリア戦略
40代の人事転職で最も重要なのは、「自分は人事のどの専門性で勝負するのか」を明確にすることです。企業は40代に対して「なんでもできるジェネラリスト」よりも、「この領域なら任せられるプロフェッショナル」を求める傾向が強くなります。
ここでは、40代人事が選べる4つのキャリア戦略を、それぞれの強みと市場価値の高め方とともに解説します。
採用特化型──ダイレクトリクルーティング・採用戦略の経験を武器にする
人材獲得競争が激化する中で、とくにニーズが高まっているのが「採用のプロフェッショナル」です。
年間100名規模の中途採用を回した経験、ダイレクトリクルーティングの導入と運用実績、リファラル採用の仕組みづくりなど、採用領域の具体的な成果を数字で語れる40代は高い市場価値を持ちます。
近年では、RPO(採用代行)から採用機能をインハウス化する企業が増えており、「自社の採用チームを立ち上げた」「スカウト体制を構築した」といった経験は、転職市場で特に高く評価されます。
向いている人:人材紹介会社との連携やダイレクトソーシングに深い知見がある方、採用KPIの設計・改善に実績がある方
制度設計型──評価・報酬制度の構築経験が高年収ポジションへの近道
人事制度の設計・改定を主導した経験は、40代の転職市場において最も高く評価されるスキルの一つです。
MS-Japanの調査でも、40〜50代の管理職・上級管理職で年収700〜900万円以上の水準を得ているのは、評価制度の改定やM&A後の組織再編など、戦略的なミッションを主導した経験がある人材とされています。
【参照元】人事求人の想定年収調査 2025|年収から考えるキャリア戦略 | MS-Japan
等級制度、評価制度、報酬制度のいわゆる「人事制度の三本柱」を設計・運用した実績があれば、大手企業やIPO準備企業からのオファーも期待できます。
向いている人:人事制度の企画・設計フェーズに携わった経験がある方、経営層への提案やプレゼンテーションに慣れている方
労務管理型──コンプライアンス対応・労務DXのプロとしての価値
労務管理は人事の中でも「守り」のイメージが強い領域ですが、昨今の法改正ラッシュや働き方改革の流れの中で、労務の専門性は再評価されています。
就業規則の改定、残業時間管理の適正化、ハラスメント対応、メンタルヘルス施策など、労務コンプライアンスを確実に運用できる人材は企業の安定経営に欠かせません。さらに、勤怠管理システムの導入やペーパーレス化などの「労務DX」推進経験があれば、付加価値はさらに高まります。
ただし注意点があります。給与計算や勤怠管理のオペレーション業務のみの経験だけでは、40代の年収水準で評価されにくいのが実情です。法的リスクの予防、社労士との連携による制度整備、IPO審査に向けた労務デューデリジェンスなど、より上流の業務経験をアピールすることが重要です。
向いている人:社労士資格保有者、労務トラブル対応に豊富な経験がある方、労務管理システムの導入プロジェクトを主導した経験がある方
戦略人事型(HRBP)──経営と人事をつなぐ「攻め」のキャリア
近年、転職市場でもっとも注目度が高い人事ポジションの一つが、HRBP(HRビジネスパートナー)です。
HRBPとは、経営戦略と連動しながら人材の最適配置や組織開発を推進する役割のこと。事業部門のリーダーと対等にコミュニケーションを取り、「この事業を成長させるにはどんな人材が必要か」「組織のどこにボトルネックがあるか」を経営目線で考え、施策を実行する人材です。
従来型の「経営から降りてくる要件に対応する」受け身の人事ではなく、「事業を俯瞰して人材課題を能動的に解決していく」姿勢を持つ人材は、転職市場からの評価が格段に高くなります。
外資系企業やグローバル企業で年収1,000万円以上のポジションも多く、M&Aに伴う組織再編、グローバル人材のマネジメントなど、戦略性の高い領域を経験していれば、さらに上の水準も現実的です。
向いている人:経営会議や事業部ミーティングに参画した経験がある方、組織開発やタレントマネジメントの施策を主導した方
自分の強みがわからないときの棚卸し方法
「自分の人事キャリアのどこが強みなのか、正直よくわからない」
これは40代の転職相談でもっとも多い悩みの一つです。キャリアの棚卸しには、以下の3つのステップが効果的です。
ステップ1:業務の「幅」と「深さ」を書き出す
まず、これまで携わった人事業務をすべてリストアップしましょう。採用、労務、研修、制度設計、組織開発…。次に、それぞれの業務でどこまで関わったかを整理します。「企画だけ」「運用だけ」「企画から実行まで一貫して」など、関わり方の深さが重要です。
ステップ2:「数字で語れる成果」を洗い出す
「採用コストを前年比20%削減した」「離職率を10%改善した」「人事評価制度を刷新し、社員満足度を向上させた」など、数値化できる実績を可能な限りピックアップします。数字があるだけで、職務経歴書や面接での説得力が格段に増します。
ステップ3:周囲からの「ありがとう」を振り返る
上司・同僚・現場の社員から感謝された場面を思い出してみてください。「調整力がある」「現場目線で考えてくれる」「制度の細かい設計が正確」など、他者から評価されたポイントは、転職市場でもそのままあなたの「提供価値」になります。
もし自分だけでは整理が難しい場合は、管理部門に詳しい転職エージェントとの面談を活用するのも有効です。第三者の視点を借りることで、自分では気づかなかった強みが明確になることは珍しくありません。
40代人事の転職を成功させる7つの実践ステップ
ここまでで、40代人事の転職市場が追い風であることや、年収相場、キャリア戦略の方向性を見てきました。では、実際にどう動けばいいのか。ここからは、転職活動を始める前の準備から内定後の交渉まで、7つのステップに分けて具体的に解説します。
ステップ① 転職の目的と優先順位を家族と共有する
40代の転職は、自分だけの問題ではありません。住宅ローンの返済、子どもの教育費、配偶者のキャリア──。生活全体に大きな影響を及ぼす決断だからこそ、まず最初にやるべきは「家族との共有」です。
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、40代の転職では「離職期間なし」「1ヵ月未満」がそれぞれ3割以上を占めています。収入が途絶えるリスクを避ける傾向が強い世代だからこそ、転職の目的と優先順位を事前に整理しておくことが欠かせません。
具体的には、次の3つを家族と話し合っておきましょう。
- 「なぜ転職するのか」──仕事内容への不満なのか、年収アップなのか、ワークライフバランスの改善なのか。転職で解決したい課題を明確にします。
- 「何を最も優先するのか」──年収・勤務地・仕事内容・役職・働き方(リモート可否など)の中で、絶対に譲れない条件と妥協できる条件を分けておきます。
- 「年収が一時的に下がった場合の許容ライン」──最低限必要な生活費を算出し、「ここまでなら受け入れられる」という下限年収を家族で合意しておくと、転職活動中の迷いが減ります。
ステップ② 人事キャリアの棚卸しと「売り」の言語化
前章で紹介した棚卸しの方法を使いながら、職務経歴を「採用」「労務」「制度設計」「組織開発」「マネジメント」の領域ごとに整理します。
ポイントは、すべてを書こうとしないことです。40代の人事は経歴が長い分、書き始めるとA4で5枚以上になることも珍しくありません。しかし、企業が知りたいのはそのうちのごく一部です。
「この会社のこのポジションで求められている経験は何か」を軸にして、関連する実績だけを抽出する。このフィルタリングが、40代の転職では極めて重要です。
また、実績は必ず「数字」で語れるように準備しましょう。「採用活動を改善した」ではなく「年間採用コストを前年比で20%削減した」。「離職率が下がった」ではなく「入社1年以内の離職率を15%から8%に改善した」。数字の有無で、面接官に与える印象はまったく変わります。
ステップ③ 転職市場の情報収集(在職中に始めるのが鉄則)
40代の転職は「在職中に始める」のが鉄則です。退職後に転職活動を始めると、焦りから妥協した転職先を選んでしまうリスクが高まります。
情報収集の方法は3つあります。
- 転職エージェントへの登録が最も効率的です。まずは1〜2社に登録して面談を受け、現在の市場価値や求人の状況を把握しましょう。この段階では「すぐに転職したい」でなくても構いません。「まずは情報収集から」という姿勢で利用できるエージェントも多くあります。
- スカウト型サービスへの登録も有効です。ビズリーチやリクルートダイレクトスカウトなどに経歴を登録しておくと、企業やヘッドハンターから直接オファーが届きます。スカウトの質や量から、自分の市場価値を客観的に測ることができます。
- 同業界のネットワーク(アルムナイ)の活用も見逃せません。かつて一緒に働いた同僚や、同じ業界のHR担当者に転職の意思を伝えておくと、非公開の求人情報やリファラルの機会が生まれることもあります。
ステップ④ 管理部門特化型と総合型のエージェントを併用する
40代の人事転職では、転職エージェントの選び方が結果を大きく左右します。おすすめは「管理部門特化型」と「総合型」の併用です。詳しくは次のセクションで解説しますが、ここでは基本的な考え方を押さえておきましょう。
管理部門特化型エージェントは、人事職の市場動向に詳しく、企業が非公開で募集するマネージャーポジションなどの「ここでしか見つからない求人」を保有しています。一方、総合型エージェントは圧倒的な求人数を持っており、異業界への転職や思わぬ選択肢を発見できるメリットがあります。
登録するエージェントの数は、2〜3社がベストです。多すぎると連絡対応に追われてしまい、本業に支障が出かねません。
ステップ⑤ 職務経歴書は「企業が求めるスキル」に絞って作る
40代の人事は経験が豊富な分、職務経歴書が「詰め込みすぎ」になりやすいのが特徴です。ここが20代・30代とは異なる注意点です。
企業が知りたいのは「うちの課題を解決できる人材かどうか」の一点です。そのため、職務経歴書は応募先企業ごとにカスタマイズするのが理想です。
具体的なポイントは3つあります。
まず、冒頭にキャリアサマリーを200〜300字で記載すること。人事経験の全体像と、とくにアピールしたい専門領域を端的にまとめます。面接官が最初に目を通す部分なので、ここで「もっと詳しく聞きたい」と思わせることが重要です。
次に、直近の経験を厚めに、過去の経験は薄めに構成すること。40代であれば15年以上のキャリアがあるはずですが、面接官が重視するのは直近5〜10年の経験です。10年以上前の実績は、簡潔な概要にとどめましょう。
そして、マネジメント規模は「何人×どんな業務」で具体的に書くこと。「人事部マネージャー」だけでは、チーム規模も業務範囲もわかりません。「5名の人事チームを統括し、年間採用計画の策定から実行、人事制度の改定プロジェクトをリード」のように書くことで、役割の解像度が一気に上がります。
ステップ⑥ 面接では「マネジメント実績」と「柔軟性」の両方を見せる
40代の人事に対して、企業が面接で見ているポイントは2つあります。「この人は成果を出せるか(スキル面)」と「この人と一緒に働けるか(人柄面)」です。
スキル面では、前述の通り具体的な数字を交えた実績をアピールしましょう。「人事制度を刷新し、エンゲージメントスコアが15ポイント改善した」「採用チームを立ち上げ、初年度で中途採用充足率を90%に引き上げた」など、企業の課題解決に直結するストーリーが効果的です。
人柄面では、「柔軟性」と「謙虚さ」を意識してください。40代の面接で企業が最も警戒するのは、「前職のやり方に固執しそう」「偉ぶっていて周囲と協調できなさそう」という印象です。新しい環境に適応する意欲や、年下の上司・同僚とも協力できる姿勢を自然に見せることが大切です。
「前職ではこうしていましたが、御社の状況に合わせて柔軟に対応したい」「まずは組織を理解することを優先したい」──こうした言葉が出てくるかどうかで、面接官の印象は大きく変わります。
ステップ⑦ 内定後の条件交渉で後悔しないためのチェックリスト
内定が出たあとの条件交渉は、40代の転職で最も後悔しやすいポイントです。「嬉しさのあまり二つ返事で承諾してしまった」「入社後に待遇が聞いていた話と違った」といった声は少なくありません。
以下のチェックリストを参考にして、承諾前に必ず確認しましょう。
- 年収の構成:基本給・賞与・各種手当の内訳は明確か。「年収700万円」の中身が基本給400万円+業績連動賞与300万円のケースと、基本給600万円+固定賞与100万円のケースでは、安定性がまったく異なります。
- 役職と権限:肩書きだけでなく、実際の決裁権限やチーム構成はどうか。「マネージャー」という肩書きでも部下がいないケースもあります。
- 入社後の期待値:入社後3ヵ月・6ヵ月・1年で、具体的にどんな成果を求められるのか。ミッションが曖昧なまま入社すると、成果を出しにくくなります。
- 働き方:リモートワークの可否、残業の実態、休暇の取りやすさは面接時の説明と一致しているか。
- 試用期間の条件:試用期間中の待遇は正式入社後と同じか。異なる場合、具体的にどこが変わるのか。
これらの確認は、転職エージェントを通じて行うのが最もスムーズです。直接聞きにくいことも、エージェント経由なら率直に確認できます。
40代人事に強い転職エージェントの選び方とおすすめ
40代の人事転職では、転職エージェントの選択が成否を分けるといっても過言ではありません。とくに人事職は、求人の多くが非公開で募集されるため、エージェントを介さなければ出会えないポジションが数多くあります。
管理部門特化型エージェントを使うべき理由
40代の人事が転職エージェントを選ぶなら、まず候補に入れたいのが「管理部門特化型エージェント」です。総合型にはない、いくつかの明確な強みがあります。
人事職の市場価値を正しく評価できる
管理部門に精通したキャリアアドバイザーが在籍しているため、「採用経験10年」「評価制度の設計実績あり」といった人事特有のキャリアを正確に査定し、それに見合ったポジションを紹介してくれます。総合型エージェントでは、人事の専門性が正しく理解されず、的外れな求人を紹介されることもあり得ます。
非公開のマネージャー・部長ポジションに強い
人事部門の管理職ポジションは、一般に公開されることが少なく、管理部門特化型エージェントが独自に保有しているケースが多いです。とくに「人事部長候補」「CHRO候補」といった経営に近いポジションは、特化型ならではの求人です。
企業の内部事情を把握している
管理部門に特化して長年の実績があるエージェントは、企業の人事組織の構成や課題、社風など、求人票だけでは読み取れない情報を持っています。入社後のミスマッチを防ぐうえで、この情報は非常に価値があります。
転職エージェントを最大限活用するための付き合い方
エージェントに登録しただけでは、転職は成功しません。40代の人事が、エージェントを最大限に活用するためのポイントを3つ紹介します。
初回面談で「本音」を伝える。転職理由、希望条件、譲れないポイント、不安に思っていること──。初回面談でどれだけ本音を伝えられるかで、紹介される求人の質が大きく変わります。「御社にお任せします」という姿勢ではなく、「この条件は譲れないが、この点は柔軟に対応できる」と具体的に伝えましょう。
紹介された求人に対して必ずフィードバックを返す。「この求人は良いが、こちらは合わない」「年収は良いが、業務内容にギャップを感じる」──こうしたフィードバックを返すことで、アドバイザーの提案精度が上がります。
複数のエージェントの情報を比較する。同じ求人でも、エージェントによって持っている情報が異なる場合があります。A社では「残業が多い」と聞いた企業が、B社では「部門によって差がある」という情報を持っていた、というケースもあります。複数のエージェントからの情報を突き合わせることで、より正確な判断ができます。
40代人事におすすめの転職エージェント7社比較
40代の人事転職では、エージェント選びが成否を大きく左右します。管理部門特化型で「人事職ならではの非公開求人」にアクセスし、ハイクラス型で「年収800万円超のポジション」を狙い、総合型で「選択肢の漏れ」を防ぐ──。この3層構造の併用が、40代人事の転職成功率を最大化する戦略です。ここでは、40代人事に強い7社をタイプ別に徹底解説します。
MS Agent(MS-Japan)|管理部門特化型の老舗
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
管理部門特化の最大手。40代人事の「第一選択」となるエージェント 設立1990年(東証プライム上場) 求人数約19,000件(非公開含む) 非公開求人約90% 40代人事の想定年収700〜900万円超
管理部門・士業に特化した転職エージェントとして30年以上の実績を持つ最大手です。保有求人の60%以上が年収700万円以上の高待遇案件で、人事職に関しては専門のキャリアアドバイザーが在籍。
「人事求人の年収レポート2025」を独自に公開しており、40代管理職の年収相場を正確に把握したうえでの提案が可能です。
上場企業の人事マネージャー〜部長候補、IPO準備企業の人事責任者ポジションなど、40代が狙うべき年収レンジの求人を的確にカバーしています。利用者の90%以上が再利用を希望するという満足度の高さも特徴です。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
40代人事に強い理由
人事・総務専門のアドバイザーが、職務経歴書の取捨選択から面接対策まで「40代ならではの見せ方」をサポート。
経験豊富なミドル層ほど保有求人とのマッチング精度が上がる構造になっており、管理部門経験者であれば40代でも手厚い支援を受けられます。ただし経験・スキルが不十分と判断された場合はサポートを断られるケースもあるため、一定の人事経験(目安3年以上)がある方向けです。
こんな人に最適:人事経験を活かして大手〜IPO企業の管理職を狙いたい40代
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
BEET-AGENT|リーダー・ミドルクラスにフォーカスした管理部門特化型
公式サイト:https://beet-agent.com
管理部門ミドルクラスに照準。丁寧な伴走型サポートが魅力 運営株式会社アシロ(東証グロース上場) 対象年収帯600万〜2,000万円以上 非公開求人約90% 登録者の人事職比率約25%。
弁護士特化「NO-LIMIT」や会計士特化「ハイスタ」で培ったプロフェッショナル人材紹介のノウハウを、管理部門全体に展開したサービスです。2022年10月のリリースと比較的新しいものの、東証グロース上場のアシログループが運営する信頼性があります。全求人5,000件以上のうち約9割が非公開求人です。
「管理部門のリーダークラス・ミドルクラスにフォーカス」と明言しており、CHRO・人事責任者候補(年収700万〜1,200万円)、HRBP、採用マネージャーといった40代が狙うポジションを中心に扱います。
両面型(企業と求職者を同一担当者がサポート)のため、企業カルチャーまで踏み込んだマッチングが可能です。
公式サイト:https://beet-agent.com
40代人事に強い理由
少人数制で担当アドバイザーとの距離が近く、「転職理由や現職の悩みを丁寧にヒアリングし、将来のキャリアパスまで見据えた提案」を行うスタイルが40代の複雑なキャリア課題に適しています。
口コミでも「面接のたびにフィードバックをもらえた」「担当者が内定時に一緒に喜んでくれた」と手厚さが評価されています。求人絶対数は大手に劣りますが、質重視の40代人事には十分な選択肢を提供します。
こんな人に最適:じっくり相談しながら上場企業〜IPO企業のミドルマネジメントを狙いたい40代
公式サイト:https://beet-agent.com
WARCエージェント|ベンチャー管理部門転職に強み
公式サイト:https://agent.warc.jp/
ベンチャーCHRO・IPO人事を狙うなら唯一無二の存在 特徴IPO準備企業500社以上のネットワーク 求人の年収水準約1/3が年収1,000万円以上 転職後の年収アップ平均150万円 対応満足度約95%
ベンチャー・スタートアップ業界と管理部門に特化した転職エージェントです。
最大の強みはIPO準備企業500社以上とのネットワーク。日本のIPO準備中企業約1,000社の約半数をカバーしており、成長企業の管理部門ハイクラスポジションへのアクセスでは他社の追随を許しません。平均年収800万円、転職後の年収アップ率は平均150万円という実績を誇ります。
アドバイザーには上場企業CFO経験者、公認会計士、戦略コンサル出身者が名を連ね、経営アドバイザーにはメルカリ取締役会長やラクスルCFOなど著名経営者が就任。専任制のアドバイザーが一貫してサポートし、利用者の98%が「相談してよかった」と回答しています。
公式サイト:https://agent.warc.jp/
40代人事に強い理由
成長フェーズごとに求められる人事人材像を熟知しており、「シリーズBの企業には評価制度設計の経験者、IPO直前企業には労務デューデリジェンスの知見がある人材」といった精度の高いマッチングが可能です。40代の人事部長・CHRO候補がスタートアップやIPO準備企業を目指す場合、替えの利かない存在となります。ただし大手安定企業の人事ポジションを希望する場合は守備範囲外です。
こんな人に最適:スタートアップ・IPO企業でCHRO・人事責任者として腕を振るいたい40代
公式サイト:https://agent.warc.jp/
JACリクルートメント|人事を極めたハイクラス向け
公式サイト:https://www.jac-recruitment.jp/
40代転職成功者の約半数を輩出。ハイクラス人事転職の本命 設立1988年(東証プライム上場) 顧客満足度8年連続No.1(オリコン) 非公開求人約75% 40代の転職成功年収ボリュームゾーン700〜900万円
オリコン顧客満足度調査でハイクラス・ミドルクラス転職部門8年連続総合1位(2019〜2026年)のJACリクルートメントは、40代人事職にとって最も信頼できるエージェントの一つです。東証プライム上場、グローバル11ヵ国34拠点という規模感が、企業との強固なリレーションを支えています。
40代への強さは数字が証明しています。転職成功者の約46%が40代以上で、40代の転職後年収ボリュームゾーンは700〜900万円、年収1,000万円以上での転職は約30%に達します。管理部門専門のコンサルタントが全国に150名以上在籍し、「人事・労務」「経理・財務」などの職種別専門チームを構成しています。
公式サイト:https://www.jac-recruitment.jp/
40代人事に強い理由
企業と候補者を同じコンサルタントが担当する「両面型」のため、企業の本音や選考のポイントを的確に把握したうえでの支援が可能です。
とくに外資系企業のグローバル人事やHRBP、日系大手のCHRO候補など、年収800万円超の非公開ポジションを狙う場合は7社の中で最も適性が高いです。ただし現年収500万円未満の場合は紹介される求人が限られる傾向があります。
こんな人に最適:外資系・グローバル企業の人事管理職、年収800万円超を目指す40代
公式サイト:https://www.jac-recruitment.jp/
リクルートエージェント|初めてのエージェント転職でも安心
公式サイト:https://www.r-agent.com
求人100万件超。選択肢の「幅」で圧倒する総合型の王者 求人数公開約75万件+非公開約33万件 40代の年収アップ実績転職者の約60%が年収アップ ミドル世代転職者数10年で約6倍に増加 全国対応○(地方求人も充実)
公開求人約75万件、非公開求人約33万件、合計100万件超という桁違いの求人数を持つ国内最大の転職エージェントです。約50年にわたる転職支援実績と業界最大の企業ネットワークを背景に、あらゆる業界・職種・地域の求人をカバーしています。2025年4月に運営が株式会社インディードリクルートパートナーズへ移行しましたが、サービス品質は維持されています。
40代支援の拡充も進んでおり、社内にはミドルシニア転職支援の専門プロジェクトが設置されています。40〜50代で転職前比1割以上の年収アップを実現した割合は、2014年度の15.6%から2023年度には27.4%まで上昇しました。
公式サイト:https://www.r-agent.com
40代人事に強い理由
最大の強みは「選択肢の幅」です。人事経験を異業種で活かしたい場合や、地方での人事職転職を考える場合、特化型エージェントだけではカバーしきれない求人に出会えます。
一方で、担当者1人あたりの受け持ち数が多く、管理部門の深い知見ではJACやMS-Japanに劣る面もあります。特化型で専門性の高い求人を確保しつつ、選択肢の幅を広げる「補完役」として活用するのが最も効果的です。
こんな人に最適:異業種転職や地方勤務も視野に入れ、選択肢を最大化したい40代
公式サイト:https://www.r-agent.com
ビズリーチ|スカウト型サイトの最有力
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
登録するだけで市場価値がわかる。40代人事と相性抜群のスカウト型 登録会員数約307万人(審査通過者のみ) ヘッドハンター数9,300名以上 会員の平均年齢40歳 年収1,000万円以上の求人全体の約3〜4割
他の6社とは根本的に異なる「スカウト型プラットフォーム」です。エージェントのように能動的な求人紹介を受けるのではなく、職務経歴書を登録して企業やヘッドハンターからのスカウトを待つ仕組みです。会員の平均年齢は40歳、平均年収は840万円で、転職成功者の約4割が40代以上と、ミドル層との相性が極めて高いサービスです。
企業の人事部門が管理職ポジションのヘッドハンティングに利用するケースが多く、CHRO・人事部長・管理部長といった重要ポジションは非公開で進むことが大半。ビズリーチ経由でしか接触できない案件は少なくありません。
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
40代人事に強い理由
スカウトの質と量から、自分の市場価値を客観的に測れる点が最大のメリットです。
有料プラン(月額3,278円〜)と無料プランがありますが、企業やヘッドハンターが最も注力する「プラチナスカウト」は無料でも閲覧・返信可能。まず無料登録でスカウトの反応を見てから本格的な転職活動を始める、という使い方が40代には最もおすすめです。他のエージェントと併用して「待ちの求人開拓」を並行させましょう。
こんな人に最適:まず市場価値を把握したい40代、ヘッドハンティングで非公開ポジションを狙いたい方
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
ヒュープロ(Hupro)|管理部門特化型
公式サイト:https://hupro-job.com/
士業・会計領域に圧倒的。経理兼務の人事経験者に強い 設立2015年 強み領域税理士・会計業界で求人数No.1 平均内定日数約21日 求人の地域偏重約63%が東京都勤務
士業・管理部門に特化した転職エージェントで、とくに税理士・会計事務所領域では公開求人数No.1を誇ります。AIマッチング技術を活用した「最速転職」をコンセプトに掲げ、平均21日での内定達成という圧倒的なスピード感が特徴です。2025年にはテレビCM放映も開始し、求人企業数を急速に拡大しています。
ただし人事職単体で見ると、MS-Japanほどの求人の厚みはありません。ヒュープロの真骨頂は会計事務所・税理士法人への転職であり、人事・労務の求人は経理・財務と一体でカバーする形態です。利用者の中心層は20〜30代と若めで、40代人事に特化した打ち出しは現時点では見当たりません。
公式サイト:https://hupro-job.com/
40代人事に強い理由
「経理と人事の兼務経験がある」「労務と経理の両方ができる」「会計事務所の管理部門も選択肢に含めたい」──こうしたケースでは、ヒュープロの会計領域に強いネットワークが活きてきます。
MS-Japanとの併用で、管理部門の求人カバー範囲を広げる「補完的な第3の選択肢」として位置づけるのが効果的です。首都圏勤務を希望する方に向いています。
こんな人に最適:経理兼務経験がある40代人事、会計事務所の管理部門も視野に入れたい方
公式サイト:https://hupro-job.com/
40代人事が実践すべき「3層構造」の使い分け戦略
7社を漫然と並行利用しても、連絡対応に追われて転職活動の質が下がるだけです。40代人事職の転職では、目的別に3層に分けた戦略的併用が最も効率的かつ効果的です。
まず第1層の3社に登録して各社の提案を比較し、自分のキャリア方向性が定まった段階で第2層を1〜2社追加するのが、40代人事の転職に最も再現性の高いアプローチです。
最終的に注力すべきは3〜4社。それ以上に増やしても面談・連絡の管理コストが転職活動全体の質を下げてしまいます。
管理部門特化型(MS Agent・BEET-AGENT・WARCエージェント)で専門性の高い非公開求人にアクセスし、ハイクラス型(JAC・ビズリーチ)で年収水準を引き上げ、総合型(リクルートエージェント)で選択肢の漏れを防ぐ──。この「質」と「量」の両立こそが、40代人事の転職を成功に導くエージェント戦略です。
40代人事の転職で陥りやすい失敗パターンと回避策
40代の人事転職では、経験が豊富であるがゆえに陥りやすい落とし穴があります。ここでは代表的な4つの失敗パターンと、それぞれの回避策を紹介します。
失敗① 条件にこだわりすぎて応募数が足りない
「年収は現状維持以上」「通勤時間は30分以内」「管理職スタートが絶対条件」──こうした条件をすべて満たそうとすると、応募できる求人が極端に少なくなります。
40代の転職では、求人の母数そのものが20代・30代より少ないため、条件を絞りすぎると動きが取れなくなってしまいます。
回避策:条件を「MUST(絶対に譲れない)」と「WANT(できれば欲しい)」に分類しましょう。MUSTは最大3つまで。それ以外はWANTに分類し、選択肢を広げることが重要です。入社後に実力を示すことで、条件が改善される可能性も十分にあります。
失敗② 「なんでもできます」アピールで専門性が伝わらない
40代の人事は、採用も労務も研修もひと通り経験している方が多いため、つい「幅広い経験があります」とアピールしがちです。しかし、企業が40代に求めているのは「うちの課題をピンポイントで解決できるプロ」です。
回避策:応募先企業の求人内容を精読し、「この会社が今まさに求めている人事機能は何か」を特定したうえで、自分のキャリアの中からそこに合致する経験だけをピックアップしてアピールします。面接で「人事全般の経験がありますが、とくに強いのは○○です」と切り出すだけで、印象はまったく違ってきます。
失敗③ 在職中に動かず退職後に焦って転職先を決めてしまう
「退職してから腰を据えて転職活動しよう」と考える方もいますが、40代でこの戦略はリスクが高いです。40代の転職活動は3ヵ月〜半年程度かかるケースも珍しくなく、収入が途絶えた状態で長期戦になると、焦りから本来の希望とは異なる企業に入社してしまう危険があります。
回避策:必ず在職中に転職活動を始めましょう。転職エージェントを活用すれば、面接日程の調整や企業との連絡はエージェントが代行してくれるため、多忙な40代でも無理なく並行できます。もし現職がどうしても辛く退職を先行させたい場合は、最低でも生活費の半年分の貯蓄を確保してから動き出すことをおすすめします。
失敗④ 転職後のギャップで早期離職してしまう
内定を得てホッとしたのもつかの間、入社してみたら「聞いていた話と違う」「前職のやり方が通用しない」「社風が合わない」──。こうしたギャップに苦しみ、短期間で再び転職してしまうケースは40代に少なくありません。
回避策:まず、面接の段階で「入社後に期待される成果」「組織構成と報告ライン」「直属の上司のマネジメントスタイル」を具体的に確認しましょう。オファー面談や条件面談の場を設けてもらい、書面に残すことも重要です。
加えて、「入社してすぐに前職のやり方を持ち込まない」という心構えも大切です。新しい環境にはその環境なりのルールや文化があります。まずは観察と理解に徹し、小さな信頼を積み上げてから改善提案を始める。この順序を間違えると、周囲の反発を招きかねません。
転職後に成果を出す──入社100日間のオンボーディング戦略
転職活動のゴールは「内定をもらうこと」ではありません。本当の勝負は、入社してからです。
とくに40代の人事は「即戦力」として期待されて入社するため、最初の100日間の立ち上がりが、その後のキャリアを大きく左右します。ここでは、入社後100日間を3つのフェーズに分けて、具体的なアクションプランを解説します。
最初の30日間でやるべきこと──組織と関係者の理解
入社後1ヵ月は「聞く」「観る」「知る」に徹する期間です。前職でどれだけ実績があっても、新しい環境のルールや文化を理解しないまま動き出すと、周囲の反感を買ってしまいます。
まず取り組みたいのはキーパーソンとの1on1です。経営層、事業部門の責任者、人事部の既存メンバー、現場のマネージャー層──。できるだけ多くの関係者と個別に話をし、「組織が今どんな課題を抱えているのか」「人事に何を期待しているのか」をヒアリングします。
この段階では自分の意見や改善案を積極的に述べる必要はありません。むしろ「まずは皆さんの状況を理解したい」という姿勢を見せることが、信頼構築の第一歩になります。
同時に、人事に関する社内ルールやドキュメントを把握しましょう。就業規則、評価制度の運用フロー、採用プロセス、使用しているHRシステムの仕様など、「当たり前のこと」を早い段階で理解しておくことで、的外れな提案を避けられます。
31〜60日間──小さな成果を積み上げ信頼を構築する
入社2ヵ月目からは、最初の30日間のヒアリングで見えてきた課題のうち、比較的短期間で改善できるテーマに着手します。
たとえば「面接の日程調整が非効率」「評価面談のフォーマットが使いにくい」「社内研修の満足度が低い」──。こうした「小さいけれど現場が困っていること」を改善し、目に見える成果を示すことで「この人は頼れる」という評価が積み上がっていきます。
ここで大切なのは、前職のやり方をそのまま持ち込まないことです。「前の会社ではこうやっていました」という言葉は、新しい環境では反発を生みやすいフレーズの一つです。「現状のやり方をベースにしつつ、こういう改善はいかがでしょうか」という提案の仕方を心がけましょう。
また、このフェーズでは上司との期待値のすり合わせを意識的に行うことも重要です。入社前に聞いていたミッションと実態にギャップがないか、優先順位は合っているかを上司と定期的に確認し、認識のズレを早めに修正しておきましょう。
61〜100日間──中期的な人事施策の提案へ踏み出す
入社3ヵ月を過ぎたあたりから、いよいよ中期的な施策の提案に移ります。最初の60日間で蓄積した組織理解と小さな成果をベースに、「この会社の人事課題を構造的に解決するにはどうすべきか」という視点で提案を行います。
たとえば、「採用チャネルの見直しと母集団形成の戦略を3ヵ月以内に策定する」「現行の評価制度の運用実態を分析し、半年後を目標に改定案を提出する」「入社1年以内の離職率改善に向けたオンボーディングプログラムを設計する」──。具体的な数値目標とスケジュールを伴った提案が、経営層からの信頼獲得につながります。
ここまでの100日間で「組織を理解している」「小さな成果を出している」「中長期的な視野を持っている」という3つの印象を残せれば、40代で入社した人事としての立ち上がりは十分に成功といえるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:40代で人事未経験でも転職できますか?
完全未経験からの転職は、40代ではかなり難易度が高いのが実情です。ただし、
まったく不可能というわけではありません。たとえば営業職から人事への転職を目指す場合、採用面接官の経験やチームマネジメントの経験があれば、それを「人事に活かせるスキル」としてアピールできます。
また、中小企業やスタートアップでは、総務や経営企画と兼務する形で人事業務に携わるポジションもあるため、まずはそうした入口を検討するのも現実的な選択肢です。
Q2:40代の人事転職で有利な資格はありますか?
人事領域でもっとも汎用性の高い資格は社会保険労務士(社労士)です。とくに労務管理型のキャリアを志向する方にとっては、大きな武器になります。そのほか、キャリアコンサルタント(人材開発・キャリア支援系)、衛生管理者(労務安全管理系)、SHRM-CP/SCP(グローバル人事系)なども、専門性の証明として評価されます。ただし、40代の転職では資格そのものよりも「資格を活かしてどんな成果を出したか」が問われるため、実務経験とセットでアピールすることが重要です。
Q3:転職活動はどのくらいの期間を見込むべきですか?
40代の人事転職の場合、一般的に3ヵ月〜6ヵ月を目安に考えておくのが現実的です。ポジションの希少性が高い管理職求人を狙う場合は、それ以上かかるケースもあります。
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、40代の転職では「離職期間なし」が3割以上を占めるなど、在職中に活動を完結させるケースが多いです。焦って妥協しないためにも、余裕を持ったスケジュールで動き始めることをおすすめします。
Q4:人事の転職で年収が下がることはありますか?
はい、可能性はあります。とくに大企業から中小企業やスタートアップへの転職では、年収が一時的に下がるケースもあります。一方で、マイナビの「転職動向調査2025年版」によると、40代男性の約48%が転職後に年収が上がっており、平均増加額は34.4万円と全世代でトップです。
年収を維持・アップさせるポイントは、自分の専門性と企業が求めるスキルのマッチ度を高めること、そして条件交渉をエージェントに任せることです。
Q5:転職回数が多い40代でも人事の転職は可能ですか?
可能です。転職回数が多いこと自体は、必ずしもマイナスにはなりません。
大切なのは、各社での経験に一貫性やストーリーがあるかどうかです。「採用→制度設計→組織開発と、人事の領域を順に広げてきた」「異なる業界で人事の仕組みづくりに携わり、幅広い知見を得た」など、転職のたびにキャリアが前進していることを示せれば、転職回数はむしろ強みに変わります。
実際に、転職回数が5社以上でも管理職ポジションで年収アップを実現した事例は複数報告されています。
まとめ──40代人事の転職は「戦略」で成功率が変わる
40代の人事転職を取り巻く環境は、かつてないほど追い風が吹いています。少子高齢化による人材不足、戦略人事への需要拡大、ミドル世代の転職市場の活性化──。データが示す通り、40代の人事経験者を必要としている企業は確実に増えています。
しかし、追い風があるからといって、何も準備せずに転職活動を始めて成功するほど甘い世界でもありません。本記事で解説した通り、40代の人事転職を成功させるには「戦略」が必要です。
最後に、今すぐできるアクションを3つにまとめます。
- 自分の「人事の専門性」を一つ明確にする
採用・制度設計・労務管理・戦略人事──どの領域で勝負するかを決めることが、すべての出発点です。
- 在職中に転職エージェントに登録し、市場価値を把握する
管理部門特化型エージェントに登録して、まずは面談を受けてみましょう。自分では気づかなかった市場価値や選択肢が見えてくるはずです。
- 転職は「ゴール」ではなく「スタート」だと心得る
内定を取ることだけに集中するのではなく、入社後100日間の立ち上がりまで見据えた準備をしましょう。それが、40代の人事転職を本当の意味で「成功」に導くカギです。
40代はキャリアの折り返し地点であり、同時に最も経験値が高い時期でもあります。これまで積み上げてきた人事の知見と経験は、必ずどこかの企業で求められています。戦略を持って動けば、40代からのキャリアチェンジは十分に実現可能です。