高齢化が進む日本では相続や不動産の登記、成年後見人に関する業務など、司法書士の需要は益々増えると予想されています。資格を取得すれば司法書士事務所や企業の法務部への就職が可能となり、独立開業すれば定年に関係なく働くこともできます。
ただし、司法書士試験は合格率が約4%の超難関試験です。独学での合格は非常に難しいため、各予備校が提供する講座の利用は必要不可欠といっていいでしょう。
司法書士講座とひとくちに言っても、大手や老舗の予備校から新興系のオンライン予備校が提供しているものまで種類や数が多数あり、どれを選べばよいのか分からないものです。そこでこの記事では司法書士講座を選ぶポイントを解説したうえで、おすすめの予備校7校について特徴を紹介します。
目次
く司法書士試験合格に強い講座を選ぶ・比較するポイント
まずは司法書士講座を選ぶ際に比較するべきポイントを解説します。
合格実績
過去にどれだけ合格者を輩出してきたのか、一発合格者や上位合格者はいるのなどは、講座や指導法のレベルを知るためのひとつの材料となります。合格実績が高ければ指導法が間違っていない証なので受講生としても安心して学習に取り組めるでしょう。
講座の価格
講座の価格も重要なポイントです。特に司法書士講座は難易度が高く学習範囲も膨大なので講座費用は高額になりやすいという特徴があります。
また合格率の低さから一発合格は非常に難しく、誰でも再受講となる可能性もあるでしょう。再受講となれば改めて費用がかかるため、継続的に学習できる価格かどうかも考慮する必要があります。
返金や割引制度を確認
予備校によっては合格時の返金制度や割引制度を設けている場合があります。定価よりかなり安く受講できるケースも多いので制度があれば利用を検討しましょう。早割などもあるため、できるだけはやめに情報収集しておくことをおすすめします。
教育訓練給付制度が利用できるかどうかを確認
教育訓練給付制度とは、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者または被保険者であった人が厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講して修了した場合に、受講費用の一部が給付される国の制度です。費用負担を軽減できるためぜひ利用したいところですが、司法試験対策講座の中でも対象講座と対象外の講座があります。事前に予備校に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
※参考:ハローワーク|教育訓練給付制度
講義・教材の質
単純に価格だけで比較するのではなく、講義や教材の質を踏まえて選ぶことも大切です。講義やテキストは分かりやすいか、合格に必要な情報が網羅されているか、知識を吸収しやすい構造になっているかなどを確認しましょう。司法書士試験の学習は基本的に長丁場になるため、モチベーションを保って学習を続けられ、合格につながる講義・教材であることが必要です。
学習のサポート体制
質問制度やカウンセリング、学習進捗状況の管理といったサポート体制も学習を進めるうえでは重要です。特に通信・Web講座を利用する場合は、講師に対面で質問したり仲間に相談したりができない環境が学習をやめてしまう原因となりかねません。1人でも継続して学習できるためのサポート体制が整っているかどうかを確認しましょう。
次項からはおすすめの司法書士講座をピックアップし、特徴を挙げていきます。
アガルート|司法試験での圧倒的な合格実績を持つオンライン予備校
アガルートアカデミーは2015年1月に開校したオンラインの資格予備校です。司法書士以外に司法試験・予備試験、中小企診断士や弁理士試験など難関資格のオンライン予備校として確実に知名度と実績を伸ばしています。
司法試験で圧倒的な合格実績を誇る
アガルートでは司法書士試験の合格率は公開されていませんので、合格実績を数字で確認することはできません。ただし司法試験で見ると、2020年の司法試験合格者は650名、合格者占有率が44.8%と、難関資格での実績が高い予備校である裏付けとなっています
低価格と返金制度でコスパ最強
入門総合講義が14万800円、入門総合カリキュラムが17万3,800円です。また低価格の割に講義時間は大手予備校並みに長めの設定となっているため、講義1時間あたりの価格で考慮すればコスパが非常に高い講座といえます。
さらにアガルートの大きな特徴として、合格特典が他社を圧倒しています。合格した場合には試験日までに申し込みをした講座費用が全額返金制度と、合格お祝い金として3万円が贈呈されます。
インタビュー出演など条件付きではありますが、頑張って合格すれば司法書士になるための費用を大きく削減できるのは魅力でしょう。
合理化を図った講座&テキスト
アガルートの講座とテキストは徹底的な合理化が図られている点が特徴です。合格に必要な情報だけを伝えることに注力しており、効率よく合格を目指せる構成になっています。また司法書士試験に精通した講師が作成したオリジナルテキストはフルカラーで視覚的に情報を整理しやすく、アイコンやマークも使用するなど見やすいレイアウトになっています。
サポート体制は標準的
アガルートはFacebookグループによる質問対応や講師による毎月1回無料カウンセリングを実施といった学習のサポート体制があります。
ただしオンラインの学習サポート体制については、音声ダウンロードや7段階の倍速機能といったもので、オンライン型の予備校にしてはごく標準的です。Webテキストやオンラインの問題演習がないためスマホだけで学習をしようとする人には物足りなく感じるかもしれません。
公式サイト:https://www.agaroot.jp/shoshi/
スタディング|業界最低水準の低価格とスキマ時間学習に強み
スタディングは多数の難関資格合格者を輩出しているオンライン型の資格予備校です。もともとのブランド名は通勤講座でしたが、2018年にスタディングへ変更し、さらに知名度を上げています。
難関資格の短期合格者が多数
スタディングでは司法書士試験の合格実績は公表されていません。ただし司法試験・予備試験や中小企業診断士試験などの難関資格で短期合格実績があり、HPには合格者の声も多く寄せられています。
業界最低水準の低価格
2022年度試験対応の司法書士総合コースは9万9,000円と業界最低水準の低価格です。司法書士講座は高額になりがちなので費用面で諦める人も多いですが、スタディングであれば大手や老舗の約4分の1の価格で受講できます。
ただし、総講座時間は短めに設定されています。短期間での合格を目指す構成なので講義が短いから悪いというものではないですが、網羅性に欠けるのが不安という方は同じオンライン予備校でもアガルートのほうがよいでしょう。
初学者でも効率的に実力がつく講座と教材
スタディングでは、短期合格者の学習方法を徹底的に研究し、心理学や脳科学などの知見と組み合わせた「スタディングメソッド」を磨き上げてきました。スタディングメソッドによって構築された講座と教材は短期間で効率的に実力がつくと定評があり、短い講義時間数ながら合格を目指せる土台が整っています。
スマホで学習が完結する充実のサポート
スタディングはオンライン版テキストやオンライン問題集、要点暗記ツールなど、とにかく学習サポート機能が充実しています。すべての学習がスマホで完結するため忙しくてまとまった学習時間を確保できない社会人には特におすすめです。
公式サイト:https://studying.jp/shoshi/
資格スクエア|独自の学習メソッドと看板講師の学習サポート
独自の学習メソッドとITを掛け合わせた新しい学習サービスを提供するのが資格スクエアです。アガルートやスタディングなどと同様にオンライン予備校に分類されますが、価格やサポート内容の拡充により教材の質は大手や老舗と遜色ない内容になっています。
司法試験・予備試験を中心に高い実績を誇る
資格スクエアも司法書士試験の合格者数などは公開していませんが、提供しているすべての難関資格で合格実績があります。特に予備試験では5年で累計200名以上という多くの合格者を輩出しており、その実力を証明しています。
価格はオンライン講座の中では高め
もっともスタンダードなプランである司法書士講座逆算プランは42万1,080円です。司法書士講座全体の中ではやや低めの価格設定ですが、アガルートの約3倍、スタディングの約4倍とオンライン講座の中では格段に高額の部類に入るでしょう。以前は半分くらいの価格でしたが、2022年版は大手・老舗予備校並みに上昇しました。
ただし添削指導や毎月1回学習進捗の確認などサポート体制が拡充されています。
看板講師による講義と最新の学習システム
資格スクエアの看板講師である三枝講師は、司法書士を志す人なら知らない人はいないと言われるカリスマ講師です。
またオンラインレジュメや条文リンク機能、問題演習機能(脳科学ラーニング)など最新の学習システムは使い勝手がよいと評判で、スマホひとつで学習が完結します。三枝講師の講義と脳科学とITを掛け合わせた最新の学習システムは評価が高く、資格スクエアの司法書士講座の人気を支えています。
記述式問題の添削指導が充実
資格スクエアの講座は記述式問題の添削指導が充実しており、もっとも重要とされる直近の司法試験5年分の過去問の中から10問が出題されます。資格スクエアはこれまでは記述式の添削がないところが難点でしたが、2022年合格目標から添削指導が追加されており講座全体がパワーアップしました。
公式サイト:https://www.shikaku-square.com/shihosyoshi
伊藤塾|47万円の高価格・合格実績は他社を圧倒
伊藤塾は法律資格・公務員試験の受験指導で抜群の知名度・実績を誇る有名校です。司法試験・予備試験の予備校として有名ですが、司法書士試験でも優れた実績を残しています。本気で合格したい方は、まずは検討するべき予備校だといえるでしょう。
2020年試験の合格者占有率は59%!
2020年司法書士試験の最終合格者のうち、59%が伊藤塾の有料講座の受講生です。法律系資格最難関の司法試験で高い実績があるだけに難関試験の合格ノウハウが充実しているため、同じく難関資格である司法書士でも圧倒的な実績を誇っています。実績がよく分からないと不安に感じるという方は実績の高い伊藤塾がおすすめです。
価格は高め
2022年合格目標の本科生コースは47万6,000円、教育訓練給付金の対象である本科生B(WEBクラス)は47万1,000円です。教室(通学)でライブ講義の受講を希望する場合は教室(通学)オプション4万円の申し込みが必要となります。
司法書士講座の費用は10万円~50万円が相場です。最近はオンライン予備校など20万円未満の低価格の講座が多数出ているため、47万円台という価格は司法書士講座の中では高いほうに分類されます。
ただしその分、講義や教材の質は高く、合格実績も他社を圧倒しています。講義や教材の質と価格とのバランスは悪くないといえるでしょう。
なお、早期申込割引や司法試験・予備試験受験生限定の特別割引など、各種割引もあります。期限があるので割引を利用して伊藤塾を利用したい方ははやめにチェックしてください。
一流講師陣による質の高い講義が魅力
伊藤塾の司法書士講師陣は、教材制作や個別指導などの受験指導歴が最低5年以上の講師だけが集まっています。もちろん全員が司法書士試験の合格者で簡裁訴訟代理等能力認定考査まで取得しており、法律への造詣が深く、講義が分かりやすいと評判です。
特にエース講師である山村講師は、最年少合格者や総合成績1合格者を輩出するなど高い実績があり受験生から圧倒的な支持を得ています。
講師陣の力と、合格のために必要な量と質にこだわったカリキュラムが相まって最短合格へと導いてくれます。
質問制度やカウンセリングで不安を解消
伊藤塾は学習のサポート体制が手厚いのが特徴です。学習をきちんと継続できるように、カウンセリングや質問制度等のサポート制度が非常に充実しています。通学であれば一流講師と直接やり取りができるのもメリットです。
公式サイト:https://www.itojuku.co.jp/shiken/shihoshoshi/kouza/21C00001.html
LEC東京リーガルマインド
LEC(東京リーガルマインド)は1984年から37年間司法書士受験を指導してきた老舗の予備校です。
一発合格者は10年で131名を輩出
司法書士試験は合格率が約4%と非常に難易度が高い試験なので、合格するまでの受験回数は4回前後が平均とされています。一発合格は至難の業といえるでしょう。そんな中でLECは2011~2020年の10年間で131名もの一発合格者を輩出しています。
初学者でも分かりやすい指導が受けられる証でもあるでしょう。毎年上位合格者も輩出しており、実績は十分です。
価格は高め
LECは初学者向け、学習経験者向け、通信・DVD・通学などさまざまなコースがありますが、たとえば2022年合格目標:新15ヵ月合格コース(春生)の通信Webは47万9,700円、通学(Webフォロー付)は55万8,900円です。
40万円台後半~50万円台が中心で司法書士講座の価格としては高めといえるでしょう。大手予備校ならではの安心感はありますが、費用面で気になる方はいるかもしれません。
基礎からしっかり学べるブレークスルーテキスト
LECのブレークスルーテキストは、法律を基礎から学ぶ人でも分かりやすいと評判のテキストです。重要条文はすべて記載されており、制度趣旨にも触れているため条文の理解が深まります。全ページにメモを取るための余白が設けられているところも受講生から好評で、講義で得た重要なポイントや問題演習で間違えやすいポイントなどを記載できます。
インターネットフォローで徹底サポート
インターネットフォローでは講義に関する質問や相談、スケジュール管理など充実した受験サポートが受けられます。スケジュール帳代わりに使える「やることリスト」や、同じ講座を受講している受験生同士で質問や相談ができる「教えてメイト」など、さまざまな機能があります。
また一問一答形式の問題が5問、メールで配信されるため試験へのモチベーションを切らさずにすきま時間を有効活用しながら学習を継続できます。
公式サイト:https://online.lec-jp.com/disp/CSfDispListPage_003.jsp?dispNo=012001001003
Wセミナー(資格の学校TAC)
法律・難関資格の受験指導を行うWセミナー(早稲田セミナー)も司法書士講座で支持を得ている予備校のひとつです。2009年に事業譲受により資格の学校TAC(TAC株式会社)が事業を引き継いでいます。
2020年度試験で記述式1位合格者を輩出
Wセミナーは司法試験で多くの合格者を輩出しており、HPでも合格者の声や合格体験記が多数掲載されています。2020年度司法書士試験では記述式1位、総合2位の合格者を輩出しており、上位合格できるだけの講義や教材であることを示しています。
価格は高め
2022年目標本科生1年本科生(総合本科生プラス:Web)は50万7,000円、給付金制度の対象となる2022年目標本科生1年本科生(Web)は44万1,000円です。45~50万円ほどと、司法書士講座の中では高い部類に入ります。
カリスマ講師の講義で自然に合格を目指せる
Wセミナーでは受講生の92%が講師に満足しているというアンケート結果があり、講師陣の質の高さを表しています。特に卓越した合格理論「山本オートマチック」を提唱する山本講師は、自身もわずか6ヶ月で試験に合格した経験をもつカリスマ講師です。講義が面白く自然に合格を目指せると評判です。
音声DLフォローで復習強化
教室講義の音声ファイルと議事録をダウンロードする機能があるため、通学・通勤中などのスキマ時間を活用して復習を強化できます。また教室収録した講義はWeb動画でスマホやパソコンなどを使っていつでも受講できるため、忙しくて講義を欠席してしまっても安心です。
公式サイト:https://www.w-seminar.co.jp/shisho.html
クレアール
超効率的な独自の学習法「非常識合格法」を提唱するクレアールは、Web通信で最高の時短学習を目指す資格予備校です。
公式サイト:https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/
資格受験指導歴52年の老舗予備校
クレアールは司法書士講座の合格実績を公開していませんが、資格受験指導歴はなんと52年という老舗の予備校です。これだけの長い受験指導歴は、受講生たちにずっと支持されてきた証だといえるでしょう。
価格は比較的お手頃
初学者が最短で試験を合格が目指せる2022年合格目標 合格ルート1年スタンダード春コース(Web通信)は35万5,000円です。アガルートやスタディングのような破格の講座にはおよびませんが、司法書士講座の中では比較的お手頃価格だといえます。
また目標年度までに合格すると合格体験記の執筆などを条件に合格お祝い金10万円が進呈されます。合格お祝い金制度はほかの予備校にもありますが、この額の合格お祝い金がもらえるのはクレアールならではのメリットです。モチベーションを高く保ちながら目標年度での合格を目指せるでしょう。
公式サイト:https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/
Webテストと復習講義で知識が確実に定着する
クレアールはスマホでも受けられるWebテストが非常に充実しています。穴埋めテストと1000問ノックテストのほかに、重要な論点について正誤理由をスピーチ訓練できる音声データもあります。
さらに各単元5~10分の復習講義がついているので重要なポイントだけを効率よく復習ができ、確実に知識が定着します。
合格サポート体制は通信講座トップクラス
クレアールの合格サポート体制は非常に整っており、通信講座の中でトップクラスです。メールや質問用紙での質問を受け付けており、回数は無制限です。また受講期間内に提出した答案はすべて採点して返却されるため本試験までに不明点を残すことなく自信を持って受験できます。
公式サイト:https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/
まとめ
司法書士講座を選ぶには、合格実績や価格、教材の質など複数の項目で比較が必要です。各社学習スタイルもさまざまなので、自分がどのように学習を進めたいのかをイメージしたうえで比較してみるとよいでしょう。自分にあった講座を選び、ぜひ合格を勝ち取ってください。