人事部の仕事と聞くと、面接対応や人事評価などをイメージする方が多いかもしれません。
もちろんこれらも人事部の重要な仕事のひとつですが、人事部の仕事は多岐にわたっており、ほかにも多数の業務があります。人事部の仕事に就いてみたいと考えている方は、人事部にどんな仕事があるのか、そもそも人事部は企業にとってどんな存在なのかを知っておくことが大切です。
この記事では人事部のミッションや具体的な仕事内容、人事部に求められる能力やスキルなどについて解説します。
\簡単1分で登録/
目次
人事部の主な3つの仕事・ミッションとは
人事部の仕事を理解するために、最初に人事部の役割やミッションを確認しておきましょう。「企業の心臓部」「経営者の参謀」といった表現をされることが多い人事部はどんな仕事をする部署なのでしょうか。
経営資源のうち「ヒト」を管理する仕事
人事は「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」の4つの経営資源のうち、「ヒト」を管理する仕事です。
「ヒト」以外の経営資源は「ヒト」が活用することが前提なので、もっとも重要な経営資源は「ヒト」だと考えられています。人材の採用や適正な配置・活用など「ヒト」の管理を通じて自社の経営戦略を達成し、事業の成長を支えるのが人事のミッションです。
組織の活性化を図り、企業の発展に寄与する仕事
人事は新しい人材の獲得や社員教育などを通じて組織の活性化を図り、企業の成長・発展に寄与する仕事です。社員の働く環境を整え、意欲やモチベーションを促して活躍してもらうのも大きな役割です。
経営環境が大きく変わる中、組織変革を牽引することが求められている
少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少やテクノロジーの発展、新型コロナウイルス感染症拡大など、経営環境は大きく変わっています。
変化の激しい時代において国内外の競争を勝ち抜き、生き残るために組織変革が必要です。人事部には「ヒト」の管理や活用を通じて組織変革を牽引することが求められています。
人事部の仕事内容は大きくわけて5つ
人事の仕事内容は多岐にわたりますが、大きくわけると以下の5つに整理することができます。
制度設計・制度運営
自社で働く従業員に関わる各種制度について立案・設計および管理・運営を行います。
具体的には、賃金や昇給・昇格、配置転換、福利厚生などがあります。制度設計や制度運営は人事部の仕事の中でも上流に位置する仕事です。人事部員として働いた経験があっても、制度設計まで経験したことがある人は多くないかもしれません。
これは別の角度から見れば、制度設計まで経験していると市場価値が高い人材と捉えられます。
人材採用・人材配置・人事異動
自社に合う人材をどのように獲得するのかの採用計画や採用方針を決定し、実際に採用活動を行います。
応募者の対応や面接の日程調整、面接会場のセッティング、採用決定後の内定式や入社式の準備など非常に多くの業務があります。
また、獲得した人材や既存人材の能力を的確に把握して配置・異動計画を策定し、各部署に配置して人材の最適化を図ります。
採用や人材配置・人事異動は現場に丸投げしないことで組織として一貫した人材を確保することができ、現場責任者の恣意的な採用や人材配置などを防ぐことができます。
人事評価
従業員の評価や評価結果の取りまとめ、評価制度への反映、昇給・昇格の実施なども人事の業務です。
働き方改革の影響やテレワークの普及にともない従来の人事評価が通じなくなっているため、人事評価や処遇の見直しなどを行うケースも増えています。従業員がモチベーションを高く保ちながら長く働き続けられるように、公平かつ適正な人事評価制度を構築・運用する必要があります。
なお、人事部が従業員の評価に絡むかどうかは企業によって異なります。人事部が評価そのものを行うケースだけでなく、評価自体は現場責任者やその上長が行い、評価制度に反映させる作業だけを人事部が担うこともあります。
人材教育・人材開発
社員のスキルアップやモチベーションの向上、キャリア開発などを目的とした研修の計画、実施なども人事の業務のひとつです。生産年齢人口の減少にともない新たな人材の獲得が年々難しくなっているため、今いる社員の能力をいかに開発するのかは重要な経営課題です。
経営層が求める人材像だけでなく現場レベルが求める人材像も把握し、それに合う教育や研修を計画、実施する必要があります。人材教育や人材開発を通じて社員の意識を改革し、スキルアップを図ることで経営戦略の実現や事業の成長につなげます。
労務管理
勤怠管理や給与計算、入社・退社の手続き、社会保険の手続きなどの労務管理も人事の重要な業務です。
安全衛生管理や健康診断の実施、メンタルヘルス対策など従業員の健康管理も人事が行います。社員が安心して業務に取り組み、その能力をいかんなく発揮してくれるよう労働環境を整えるのも人事の役割です。
なお、人事部が労務を担当するかは企業によって異なります。労務専門部署がある場合や総務などのほかの部署が行う場合もあります。
企業規模で異なる人事部の仕事内容
人事部の仕事内容は、企業の規模によっても異なります。経験できる業務範囲も変わるため、人事部への転職を考えている方は規模による違いを把握しておきましょう。
大手企業の人事部
大手企業の人事部は業務が細分化されている傾向があります。これは人事業務の効率化という意味も大きいのですが、大手企業は採用にしても人材教育にしてもとにかく関わる人の数が多いので、分担しないと人事業務がまわらないというのがあります。
たとえば新卒採用は毎年数百人規模にのぼるため、内定者への連絡や入社手続きだけでも膨大な量をこなければなりません。
そのため
- ・募集のために人材紹介会社とやり取りをする担当者
- ・日程調整をする担当者
- ・面接を行う各部署の責任者や経営陣につなぐ担当者
といった形で細かく担当をわけています。また採用活動ひとつとっても、新卒担当や中途採用担当、アルバイト担当など細かく担当が分かれているケースもあります。
人事としての市場価値という観点から見ると、担当業務の専門性を高められます。また大勢の人を相手にするため、いろいろなタイプの人と接する機会があり、大量の業務をさばく処理能力も磨かれます。
一方、担当できるのは人事業務のごく一部にすぎず、人事の仕事の全体像や流れを把握するのは難しい面があります。
中小企業の人事部
中小企業の人事部は大手のように分業化されておらず、1人で採用から人材教育、人事評価まで幅広い業務を担うケースが多いです。
採用でいうと小さな会社の場合は年に数人程度しか採用しないというケースもあるので、役職者が募集から日程調整、面接まで1人で行うことも珍しくありません。そもそも、人事部がないケースも多く、総務や経理などとの兼任というケースも多くあります。
中小企業の人事は人事業務全般を担当するため幅広い業務経験を積むことができ、人事の仕事の全体像や流れを把握できます。一方、大手に比べると対応人数が少ないケースが多く、専門性を極めにくい面があります。
人事部の仕事に必要な能力・スキル
人事部として活躍するためには、以下のような能力やスキルが必要です。
コミュニケーション能力
人事は社内外の多くの人と関わる職種なので、何といってもコミュニケーション能力が必要です。
たとえば採用活動では学校訪問による自社のPRや各部署への協力要請、人材教育では外部講師への依頼や内容のすり合わせなど社内外の人とあらゆる場面でコミュニケーションが発生します。
単に人前で話をするのが上手というだけでなく、人の話を聞く力や自分の考えを言語化して相手に伝える能力が必要です。
情報収集能力
人事は人材配置や異動に必要となる人事情報や、頻繁に実施される法改正の情報、社会の動きに関する情報など多数の情報を扱います。
また離職率の低下や従業員のモチベーション向上等を目的とした施策を実施するために、従業員が労働環境や仕事に対してどんな考えを持っているのか等の情報も収集する必要があります。情報収集能力は人事に不可欠な能力のひとつです。
事務処理能力
求人票の作成や人事評価のデータ管理、給与計算や勤怠管理など事務処理が多く発生します。
そのため正確かつスピーディーに処理できる事務処理能力が必要です。特に給与計算や社会保険の手続きを行う場合は高い事務処理能力が求められます。
また年間スケジュールに沿って滞りなく業務を進めなければならないため、進捗管理能力も必要となるでしょう。
マルチタスク能力
人事の仕事は多岐にわたるため、マルチタスク能力も必要です。定型業務だけでなく突発的な業務も発生するため、その都度頭を切り替えて柔軟に対応しなければなりません。
特に中小企業の人事は採用活動から入社手続き、能力開発など複数の業務を担当するケースが多いため人事業務をマルチにこなす能力が必須です。
法令の知識と高い遵守意識
労働基準法をはじめとした労働法や社会保険関係の法律などの知識が必要です。
単に法律を知っているというだけでなく、高い遵守意識を持ち、人事としてほかの社員の手本とならなければなりません。
また応募者や社員の個人情報、社内に公表する前の異動情報など秘匿性が高い情報を扱うケースが多いため、これらの情報を適切に取り扱う意識も求められます。
経営者視点での戦略的思考
経営目標の達成や経営課題の解決のために人材を採用、活用するのが人事の仕事なので、経営者視点での戦略的思考が必要です。
経営陣のパートナーとして、目指すべき組織のあり方までも共に考える人事が求められています。
特に近年は性別や立場、働き方や働く場所などにかかわらず誰もが活躍できる労働環境が求められています。
企業を取り巻く環境は大きく変わり、採用手法や評価方法の転換・変革も必要とされています。時代のニーズを踏まえた人事戦略を策定する能力、思考力が必要です。
自社の魅力を語れるのかも重要
人事は学生や求職者向けに自社をPRし、優秀な人材を確保することが重要なミッションのひとつです。
そのため自社の特徴を深く理解し、「この会社で働きたい」と思ってもらえるだけの魅力的で説得力のあるアピールをしなければなりません。
会社説明会などに訪れた候補者が採用後に「人事の人が目を輝かせながら会社の魅力を語っていたため入社したいと感じた」と話すのはよくあるケースです。自社の魅力を最大限に伝えて人材を確保できるかどうかは、人事の腕の見せ所でしょう。
人事部の仕事に就く方法
最後に、人事部の仕事に就く方法を紹介します。
社内異動でなるケースが多い
人事は自社の理念やビジョンを理解したうえで、人材採用や人材配置を実施する必要があるため、社内異動で人事に配属されるケースが一般的です。
そのため、まずは異動の希望を出すのが人事部の仕事に就くための王道の方法です。人事としての適性があると判断されれば転職のリスクを取らずに人事部の仕事に就ける可能性があります。
ただし、異動は希望すれば必ず通るものではないため、確実性のある方法ではありません。
経験者なら転職のチャンスもある
人事経験者であればほかの企業の人事部へ転職するのも方法です。
特に人事経験が5年以上あると多様な業務を経験しており、人事部の中心的な役割を担っているケースが多いため、経験を活かした転職が実現しやすくなります。これまでの経験や知見を活かしつつ、さらに業務の幅を広げたり専門性を高めたりすることもできます。
人事の場合は応募書類の書き方や面接でのアピール方法など、どうすれば応募先の目に留まるのかを心得ているので、転職活動は難しくないかもしれません。
ただし応募先の情報収集などは1人で行っても限界があり、情報の厚みがでないため、転職エージェントを活用しながら活動を進めるのがよいでしょう。
人事と親和性が高い業務経験があれば未経験でも転職可能
人事未経験からの転職は難しいですが、人事と親和性が高い業務経験があれば転職のチャンスがあります。
たとえば人材紹介会社からの転職や営業職からの転職などが代表例です。またコミュニケーション能力や事務処理能力など人事に不可欠な能力をしっかりアピールすることで、未経験でも転職の可能性を高められます。
まとめ
人事部は人材の管理や活用を通じて組織を活性化し、企業の成長を加速させるのが仕事です。
具体的な仕事内容は多岐にわたり求められる能力やスキルも多数ありますが、その分奥が深く、やりがいも大きい仕事だといえるでしょう。