社労士になるためには実務経験は必須ではなく、未経験でも社労士試験に合格して資格を持っている方も多いです。また、社労士試験は30代以降で合格する方も多いので、【30代以降/未経験】という、一般的な転職市場では難易度が高くなる状況での転職になることもあり得るでしょう。
今回は、未経験で社労士に転職される方に、社労士の転職先や未経験ならではの注意点などについてご説明します。
目次
実務未経験でも社労士にはなれる|社労士になるための条件
最初にお伝えしたように社労士になるためには実務経験は必須となっていません。まずは社労士になるための大まかな流れと条件についてご説明します。
社労士になるための手順
社労士になるための大まかな流れは上記の通りで、特に大事なポイント2つは
- 社労士試験合格
- 全社労への登録
こちらの2つです。特に社労士試験は合格率10%未満で膨大な勉強をする必要がありますが、受験資格に実務経験が必須ではありません。
試験合格後は全社労へ登録していきますが、こちらでも実務経験こそは要件にありますが、事務指定講習で代用ができますので、こちらも必須ではありません。
つまり、冒頭でもご説明したように未経験で社労士資格を取得されている方も少なからずいることになりますね。
社労士試験の受験資格
項目 | 必要条件 |
学歴 | 高専/短大/大学卒、専門卒(専門士/高度専門士の称号) |
実務経験 | 3年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験 |
国家資格 | 厚生労働大臣が認める79の国家試験合格 |
参考:「社会保険労務士試験の受験資格|社労士試験オフィシャルサイト」
社労士試験を受けるにあたって、受験資格があります。項目は3種類あり、いずれかの項目さえ満たしていれば誰でも受けることが可能です。
実務経験も項目の1つにありますが、学歴や他の国家資格でも変わりになります。
全社労登録に必要な要件
社労士試験に合格した後も全社労に登録しないと社労士にはなれません。全社労への登録はいずれかの要件を満たしておく必要があります。
- 2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験
- 事務指定講習の修了
未経験の方でも、事務指定講習を受けることで全社労への登録ができるようになります。費用が77,000円かかりますが、実質8日間で講習も終わるためわざわざ社労士事務所などで経験を積む必要もありません。
参考:「事務指定講習|全国社会保険労務士会連合会」
社労士の主な転職先と未経験に対する特徴
こちらでは社労士の転職先を4種類ご紹介します。それぞれの転職先によって未経験を募集する傾向も違いますので、特徴についても触れていきます。
なお、あくまでも傾向に過ぎませんので、具体的には求人票などをしっかり調べ、どのような人材が求められているのかを把握して転職を行いましょう。その時々でしっかり調べることで、未経験歓迎の転職先を見つけられるかもしれません。
社労士事務所|未経験なら小~中規模事務所を中心に探す
社労士が転職するにあたって真っ先に思い浮かべるものが、社労士事務所への転職でしょう。しっかりと社労士業務を行うことができますし、独立開業への準備をすることもできます。
社労士資格を取得して転職する方も、いきなり独立するのではなく、まずは社労士事務所で数年働いて、実務経験やノウハウを得たのちに独立することが安全でしょう。
小~中規模事務所であれば、未経験でも採用しているケースも多いのですが、そもそもの求人があまり出ていないこともあります。
一方、大手社労士事務所では即戦力が求められやすい傾向にあり、未経験ではなかなか採用まで至らない可能性も高いです。
民間企業の人事・総務部|即戦力が求められやすい
社労士資格を持っている方でも、企業の人事部・総務部などで働く社労士(企業勤務社労士)も多くいます。特に社労士は社会保険や労働関連の法律には精通していますので、企業から求められる声は多いです。
ただし、企業が社労士の採用を考えている場合、その業務を一任できるような即戦力を求めていることがほとんどです。
未経験で社労士として一般企業に転職することは難易度が高くなりますし、そもそもの未経験歓迎の求人も少ないと言えるでしょう。
一方、社労士資格を問わない人事・労務の仕事であれば未経験者でも歓迎しているケースが多いです。給与面などの労働条件が格段に良くなるわけではありませんが、まずは社労士に限らない未経験歓迎の社労士に関連する業務ができる企業への転職も1つの方法ですね。
数年間社内の人事労務等を担当することで、経験者と言える立場になり、さらには社労士資格もあるので転職の選択肢も広がることでしょう。
他士業の事務所|即戦力が求められやすい
社労士事務所ではない他士業の事務所でも社労士の求人を出していることがあります。社労士には社労士にしかできない独占業務がありますので、同じ顧問先でも税理士や社労士など、担当が違うこともあります。
特に税理士事務所は、顧問先従業員の年末調整など業務に似通う部分がありますので、税理士事務所で働く社労士の方も多くいます。
ただし、入所後は教育などを受ける機会もなく、いきなり業務を担当してもらうことがほとんどで、即戦力が求められます。未経験の方で転職できる他士業の事務所も限られてきます。
独立開業|未経験から独立開業する人もいるが経営手腕と実務は伴う
転職とは少し違いますが、社労士として独立する方は多いです。
参考:「社会保険労務士の業務展開についてのアンケート調査|大阪大学」
実際に社労士全体の80%以上は自身で開業していますので(副業ありも含む)、将来的に社労士として独立を考えている方も多いでしょう。
実は実務未経験の方でも社労士として独立されている方も少なくはありません。3号業務である相談やアドバイスに関しては、ビジネストータルでのスキルやコミュニケーション能力、経営スキルなどが大きく関わってくる部分が大きいです。
社労士として実務メインの独立開業ではなく、コンサルティングを中心とした独立開業であれば、やり方次第では未経験でも成功できると言えるでしょう。
未経験で社労士に転職できる転職先が求める内容と注意点
『社労士募集』で求人を出している場合には即戦力を求めている傾向が強いです。一般的な転職よりも未経験での転職は難しくなるとお考えください。
それでも未経験の社労士を募集している企業・事務所は以下の点を特に大事にしています。就職面接などで特にアピールするポイントなども一緒にご説明しますので参考にしてみてください。
ポテンシャルを重視している
ベンチャー企業や小規模な事務所であれば、「業務を任せたい」との思いよりも「一緒に成長していきたい」と考えている場合も多いです。その場合、過去の実績よりも人柄ややる気などに重きを置いていることがあります。
ある程度の年齢による制限はかけられることが多いのですが、「自分も社労士として成長したい」との思いを理解してくれれば、未経験でも採用を行ってくれる転職先も出てくるでしょう。
人手不足だから
こちらはどちらかというとネガティブな理由が多いのですが、急遽担当者が離職したなど、人手不足が原因で未経験でも歓迎のハードルの低い求人を出しているケースもあります。
この場合、人手不足になっている理由を把握していないと、いざ転職してみても粗悪な労働環境で「元の職場が良かった」なんてことにもなり得ます。
一方で、急成長をして急遽人事労務関係の人員を増やしたいなど、ポジティブな理由で人手不足になっている企業・事務所もありますので、求人を出している背景をしっかり調べることも大事ですね。
未経験で社労士に転職する時におすすめの転職サイト・エージェント
転職を成功させるためには、条件に合う事務所や企業が多く載っている転職サイトやサポートしてくれる転職エージェントの存在が重要です。こちらでは、社労士の方が転職の際に使える転職サービスをご紹介します。
MS-AGENT
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
社労士限定の転職サイト・エージェントで有名なサービスはないのですが、このように管理部門や士業に特化した転職エージェントはいくつか見当たります。
一般的な転職エージェントよりも給与も良い企業が多いですし、社労士を求めている求人も見つかりやすいです。
SAMUEAI JOB
公式サイト:https://www.samuraijob.com/
また、社労士資格をキャリアアップに役立てるために、ハイクラス向けの転職エージェントを利用してみても良いです。転職エージェントの登録・利用は無料でできますので、属性の違うサービスをいくつか登録して担当者に相談してみることをおすすめします。
一般企業を取り扱う転職エージェント
特に企業内で社労士として転職しようとお考えの方は、一般的によく知られるマイナビやdodaなどの転職エージェントにも1~2つは登録しておくこともおすすめします。上記の専門分野に絞った転職エージェントよりも圧倒的に求人が多い部分がポイントです。
一般企業でも人事労務関係での高待遇な求人を出していることもありますので、未経験歓迎の求人も見つけやすいでしょう。
転職エージェントを利用することで、こちらの経験や資格、求める条件などを伝えることで担当のアドバイザーが求人を提案してくれますので、転職サイトで自分で求人を探すよりも探しやすさが大違いです。
まとめ
社労士になるために実務経験は必須ではないため、未経験で社労士に転職される方もいることでしょう。ただし、社労士としての求人では即戦力を求めているケースが多く、一般職よりも未経験には厳しい転職市場とも言えます。
未経験で社労士に転職しようとお考えの方は、まずは小規模事務所やベンチャー企業を中心に探してみることをおすすめします。どうしても未経験歓迎の社労士求人が見つからない場合、社労士限定の求人にこだわらず人事労務関係の仕事で経験を積んで、数年後に資格と経験どちらも持ち合わせた上で転職するのも良いでしょう。