公認会計士を目指す人や公認会計士資格を持つ人のほとんどは、上場企業などの監査を行う監査法人への就職を目指すことになると思います。
公認会計士資格を無事取得できても就活に失敗するようなことがあればもったいないですよね。
監査法人の就活状況はどうなっているのでしょうか。就活のスケジュールや志望動機・自己PRの考え方、面接で気をつけるべきことなどを紹介します。
目次
監査法人の仕事内容は?
上場企業は、投資者保護の観点から公認会計士による監査が必要になります。投資家は企業が情報公開(ディスクロージャー)した資料を参考にしながら「この会社に投資しても良いのか。」ということを考えます。
しかし、企業が正しい情報開示をせず、後々間違ったデータであったとなれば株価は暴落して投資家は損することになってしまいます。そんなことを防ぐために、監査では決算内容に不正や誤りがないかをチェックします。
その監査を行うことができるのは国家試験である公認会計士試験を合格したものだけとなっており、いわば公認会計士の独占状況となっているのです。
多くの公認会計士は監査法人に所属して働くことになります。監査法人が担う仕事は監査業務が8割ほどを占めますが、以下のような仕事も行います。
- M&Aにおける会計面のデューデリジェンス
- IPO支援
- IFRS導入支援
- コンサルティング業務
- 担当企業に対する会計の勉強会
公認会計士に人気の就職先は?
公認会計士に人気の就職先とはどんなところなのでしょうか。
4大監査法人(BIG4)
日本を代表する監査法人は以下の四社で、4大監査法人やBIG4などといわれています。
- 有限責任あずさ監査法人
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- PwCあらた有限責任監査法人
日本の上場企業の約8割がこの4代監査法人に監査業務を依頼しており、ほとんどの公認会計士が最初のキャリアとしてこれらの一つを選びます。
大手監査法人で働くと大きなクライアントの担当に若いうちから経験できるというメリットがありますし、給与水準も高いです。配属された部門で専門性を極めていくことになるので、一つの分野を突き詰めて行きたい人には理想的な環境と言えます。
また、中小監査法人では経験できないような海外案件やM&A案件に携わることができるチャンスも多いでしょう。
中小監査法人
中小監査法人では、大手監査法人のような大きなクライアントと仕事をする機会は少ないかもしれません。しかし、クライアントの規模が小さければ自分一人でさまざまな分野を担当できます。
たとえば、監査を行いながらコンサルティングを行うなど、役割が細分化された大手監査法人ではできない経験を積むことができるのです。
特にキャリアプランとして独立を見据えている人にとっては色々経験できて良い環境にあるので、あえて自分を最速で成長させるために中小監査法人を就職先に選ぶという人もいます。
監査法人の就活日程
監査法人の就職活動は、公認会計士資格合格発表後から始まるのが一般的です。公認会計士試験の合格発表は11月中旬頃ですが、公認会計士の就活は合格発表後から始まり、約2週間後の12月初旬には内定が出ます。
監査法人の就活は決戦!
上記の通り監査法人の就活は短期決戦になるので、公認会計士資格の合格発表前から就活の準備を始めておかないと、「選考が間に合わなかった」「企業研究ができなかった」ということになってしまいます。
そのため、試験が終わったら合格することを前提に自己分析を行ったり、ホームページの情報やOB訪問で企業研究をしたりしておくことをおすすめします。
公認会計士試験は全て合格する必要はある?
公認会計士資格は医者・弁護士と並ぶ3大難関資格と言われています。試験は2回に分かれていますが、就活までに全て合格する必要はあるのでしょうか。
大手監査法人は基本的には全部合格が必須
大手監査法人では、公認会計士試験論文式試験全科目合格者を対象に就活をしています。足元公認会計士は売り手市場なので、公認会計士資格を取得できればどこかには就職できるといわれています。
全教科合格していなくてもトレーニーとして就職できることも
監査実務を経験しながら、公認会計士試験合格を目指すこともできるトレーニーとして就職することができる監査法人もあります。 たとえば、PwCあらた有限責任監査法人では公認会計士や簿記の資格がなくても人物本位で「公認会計士育成採用」を行っています。
受験期間中は、指定した専門学校にて勉強に集中する環境が用意されており、万が一2年間のサポート期間で合格ができなかった場合は働きながら公認会計士資格取得を目指します。
専門学校にかかる費用は法人が負担してくれますが、お給料をもらいながら勉強ができるという点でメリットが大きいです。
参考:よくある質問(FAQ)‐公認会計士育成採用 | PwC Japanグループ
公認会計士資格試験の内容
上記でも説明しましたが、監査法人へ就職するためには、基本的には公認会計士の試験に合格しておいた方が採用される可能性が高そうです。
公認会計士資格の内容や合格率、合格するために必要な勉強時間はどれくらいなのでしょうか?
公認会計士資格試験の教科は?
公認会計士資格は短答式試験(マークシート)試験と論文式試験の2つに分かれています。
短答式試験科目は、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4教科となっています。ただし、財務会計論は簿記と財務諸表から成っており実質5科目の勉強が必要です。
短答式試験は年2回チャンスがあり、続く論文式試験に合格できなくても2年間は短答式試験が免除されます。
論文式試験は会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学から1科目)の5教科の受験が必要です。
論文試験は毎年8月の1回しか受験のチャンスはありません。論文式試験は科目合格性が導入され、すべてに合格できなくても2年間の猶予があります。
また、監査法人へ公認会計士として就職をする場合、公認会計士資格を合格した人が対象になりますが、公認会計士として登録するには2年間の実務経験(業務補助)と実務補習を受けて内閣総理大臣の確認を受ける必要があります。
参照:日本公認会計士協会|公認会計士試験について
公認会計士資格試験の合格率は?
公認会計士の合格率は、令和1年試験は10.7%、平成30年試験は11.1%となっています。 公認会計士の合格者が増えたこととリーマンショック後の不況により、公認会計士が資格を取っても就職ができない事態に陥りました。
そのため、試験の難易度を上げるなどして国として合格者削減する方針を取っていましたが、景気の回復に伴い近年では合格率は回復傾向にあります。
参照:金融庁|令和元年公認会計士試験の合格発表の概要について
公認会計士の試験に合格するために必要な勉強時間
公認会計士試験に合格するための勉強時間は3,000時間~5,000時間といわれています。年数にすると2年~4年で、勉強時間が多く確保できる大学生なら2年間集中して勉強することで合格を目指すことも可能です。
社会人が監査法人に転職できる?
在学期間中または卒業後すぐに公認会計士資格を取ることができれば監査法人に就職するのは難しくなさそうです。それでは、社会人になってから勉強を始めて公認会計士になることを目指すことはできるのでしょうか。
公認会計士は売り手市場
公認会計士は売り手市場で、公認会計士資格さえあれば一度社会人として働いていても採用してもらえるでしょう。むしろ社会人として働いていた業界についての理解があるとそれを業務で活かすことができるので、メリットは大きいといえます。 しかし、公認会計士資格の勉強には3,000時間~5,000時間必要となるので、働きながら資格の勉強をするのは非常に大変です。プライベートの時間を作ることはほとんどできなくなってしまう覚悟が必要です。
30歳までの若手の方が就職しやすい
公認会計士資格は年齢制限のない国家資格なので何歳になっても資格取得は可能です。ただし、大手監査法人に就職したいのであれば、キャリア形成のために30歳までを目安にした方が良いといえます。 大手監査法人は学歴など関係ないとはいえ、国公立や有名私立から優秀な人材が集まります。
難関資格である公認会計士資格を突破しただけでも世間的にはステータスがありますが、監査法人内では公認会計士資格取得は当たり前です。その中で出世レースを争はなければいけないので、特に監査法人内で出世をしたいと思うのであれば若い内に就職しておいた方が良いといえます。
そうしなければ、入社年次が早い自分より若い人が上司になるなど、仕事がやりにくい環境になる可能性もあるでしょう。
また、監査法人に入社してから公認会計士としてのキャリアがスタートするので、年齢が高くなってからの入社では生涯年収が低くなってしまうので、その点でも注意が必要です。
監査法人の志望動機はどうすれば良い?
監査法人の志望動機を考えるにあたり、まず「なぜ公認会計士として働きたいのか」ということを明確にする必要があります。そして「なぜ監査法人の中でこの監査法人を選んだのか」という理由付けが大切です。
なぜ公認会計士として働きたいのか
どこの監査法人で働くにしても話すこととなる自分自身が働く上での軸となる大切なところです。
- 「投資家保護のために公正な監査をすることに興味がある。」
- 「会計面でお客さまの悩みを解決できるようなコンサルティングをしたい。」など
さまざまな理由があると思いますが、「なぜ公認会計士でなければいけないのか」という理由を上手く話せる用意すると良いでしょう。
なぜ監査法人の中でこの監査法人を選んだのか
その監査法人にしかない特色とそれを生かせるスキルがあるということを話せるとアピールできます。たとえば、海外案件に強い監査法人であれば、
「他社にはできない世界を舞台にダイナミックな案件に携わりたい。自分の英語力を生かせる環境にある。」といえば納得してもらいやすくなるでしょう。
また、コンサルティング業務に強い監査法人ならば「潜在的なニーズを見つけ出すのが得意なので、コンサルティングに力を入れている御社で監査だけではなく幅広い挑戦がしたい。」と述べるのも良いのではないでしょうか。
このように具体的な業務内容やその監査法人にしかできない特色が分かっていることをアピールすると「企業分析がきちんとできているな」と好印象になると思います。
監査法人に就職しやすい自己PRは?
公認会計士は監査において不正や誤りを見つけるのが主な仕事となりますが、膨大な量のデータの確認や書類のチェックなど仕事内容は根気が必要になるものです。そのため、このような仕事を遂行するための集中力や正義感があるということをアピールしましょう。
また、公認会計士資格は法改正などに伴い毎年情報をアップデートする必要がありますし、入社後も勉強することが多いです。
- 「真面目な性格で勉強することを楽しめる」
- 「人に教えるのが得意なのでクライアントに税務面でのアドバイスをすることに自信がある」
ということも良いアピールになるのではないでしょうか。
監査法人の就職試験で気をつけること
監査法人に限らず就職活動では当然なことですが、服装、あいさつ、マナーには十分気をつけるべきです。公認会計士はお客さまの大切な情報を一般公開前にチェックする仕事のため、「だらしない」という印象は大きくマイナスになります。
面接官は、お客さまに悪印象を与えない人を選ぼうと思っているので、清潔感がある服装で面接には望み、ハキハキと回答することが大切です。また、数字を扱う公認会計士は曖昧なことを適当に答えるのはご法度です。
そのため、面接で分からないことを聞かれた場合などは無理に取り繕ったり、嘘を言ったりするのも禁物です。
公認会計士資格以外で有利になる能力は?
公認会計士の仕事は英語力があると有利になるでしょう。大手企業の監査では、海外現地法人の財務諸表や決算情報などをチェックすることになりますが、これらの書類は英語で作成されます。また、海外の企業をM&Aする場合は、買収先の会計内容を見て買収するにあたり問題がないかを確認するための英語力が必要になります。
このように、英語力があれば海外案件もスムーズに対応できるのでアピールポイントとして大きいです。
公認会計士の転職に特化した転職エージェントおすすめ3選
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まとめ
監査法人への就活は、公認会計士資格の合格発表後すぐ始まり、約2週間で内定が決まる短期決戦です。
近年、公認会計士は売り手市場なので「どこにも就職できない」ということはないと思われますが、自分が働きたいと思う監査法人に就職したいのであればしっかり準備しなくてはいけません。
公認会計士資格の合格発表前から企業分析や自己PRを始めておくことが大切ですし、面接では好印象を持ってもらえる身なり・あいさつ・マナーに気をつけて望む必要があります。