弁護士として働く方や弁護士業界で働く方は、四大法律事務所の存在はご存知のことでしょう。中には、いつかは四大法律事務所で働きたいと考えている方も少なくないはずです。
先にお伝えすると、四大法律事務所は年収も非常に高く、経歴としても非常に魅力的なものと言えます。一方で、採用条件も厳しく、入所後の激務や日々の向上も求められ、年収相応の働きが必要となってきます。
四大法律事務所とは、日本国内で上位4番目に規模が大きい「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」「長島・大野・常松法律事務所」「西村あさひ法律事務所」「森・濱田松本法律事務所」の法律事務所のことを言います。
こちらの記事では、四大法律事務所の平均年収や特徴、就職や転職をするための条件を解説します。
四大法律事務所へ就職・転職を希望している方や、弁護士業界の平均年収を知りたい方は、ぜひ参考にされてください。
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四大法律事務所の年収事情と事務所の概要
年収について詳しくご説明する前に、まずは四大法律事務所のそれぞれの概要についてご説明します。
先にお伝えすると、四大法律事務所の顧客の多くが企業で、取り扱い分野も企業法務を中心に知的財産や倒産などが多くなっています。弁護士として四大法律事務所への転職を考えている方は、企業法務を取り扱う法律事務所を経験した後に挑戦すべきでしょう。
なお、後述する「年収相場の下限」には、パラリーガルや秘書、事務員などの弁護士以外の方の年収も含まれています。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の概要は次のとおりです。
事務所名 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所(AMT法律事務所) |
拠点 | 東京・大阪・名古屋・海外 |
所属弁護士数 | 日本法資格弁護士:約570名 非日本資格弁護士:約60名 弁理士:約20名 |
年収相場 | 380万円~2,600万円 |
得意領域 | ・銀行 ・金融 ・キャピタルマーケット ・危機管理 ・不祥事対応 |
参照元:アンダーソン・毛利・友常法律事務所、マイナビ2024 アンダーソン・毛利・友常法律事務所所外国法共同事業
長島・大野・常松法律事務所
長島・大野・常松法律事務所の概要は次のとおりです。
事務所名 | 長島・大野・常松法律事務所(NOT法律事務所) |
拠点 | 東京・海外 |
所属弁護士数 | 586名(外国弁護士、海外拠点含む) |
年収相場 | 400万円~2,500万円 |
得意領域 | ・銀行 ・金融 ・キャピタルマーケット |
参照元:長島・大野・常松法律事務所、リクナビ 長島・大野・常松法律事務所
西村あさひ法律事務所
西村あさひ法律事務所の概要は次のとおりです。
事務所名 | 西村あさひ法律事務所(NA法律事務所) |
拠点 | 東京・名古屋・大阪・福岡・海外 |
所属弁護士数 | 約750名(外国弁護士を含む) |
年収相場 | 300万円~2,040万円 |
得意領域 | ・銀行 ・金融 ・不動産 ・M&Aコーポレート ・知的財産法 ・情報法 ・事業再生 ・倒産 |
参照元:西村あさひ法律事務所、マイナビ2024 西村あさひ法律事務所
森・濱田松本法律事務所
森・濱田松本法律事務所の概要は次のとおりです。
事務所名 | 森・濱田松本法律事務所(MHM法律事務所) |
所在地 | 東京・大阪・名古屋・福岡・高松・海外 |
所属弁護士数 | 約720名(東京オフィス:約520名) |
年収相場 | 300万円~3,000万円 |
得意領域 | ・銀行 ・金融 ・キャピタルマーケット ・M&Aコーポレート |
参照元:森・濱田松本法律事務所、マイナビ2024 森・濱田松本法律事務所
四大法律事務所の平均年収と勤続年数や役職による年収の違い
それでは、こちらの項目で四大法律事務所の平均年収や勤続年数・役職ごと年収推移についてご説明します。
入所後の平均年収や年数ごとの違い
四大法律事務所で働く弁護士の平均年収は、1年目から1,000万円を超えることがほとんどです。将来的に数千万円の年収を目指すことも可能で、非常に高い水準であると言うことができます。
入所期間 | 年収(弁護士の場合) |
1年目 | 1,100万円~1,200万円 |
3年目 | 1,300万円~1,500万円 |
5年目 | 1,500万円~2,000万円 |
弁護士の平均初任給は500万円程度、平均年収が1,100万円程度ですので、入所してすぐに弁護士の平均年収が貰えることになるでしょう。数年働けば、周りの弁護士よりも大きく差がついた年収を貰えるようになります。
【参考】弁護士の現実的な年収はいくら?|キャリアアップステージ
役職ごとの年収の違い
また、四大法律事務所の役職ごとの年収の違いは次の通りです。
役職 | 年収 |
弁護士秘書 | 300万円~500万円 |
パラリーガル | 400万円~600万円 |
ジュニアアソシエイト弁護士 | 1,100万円~1,500万円 |
シニアアソシエイト弁護士 | 1,600万円~3,000万円 |
パートナー弁護士 | 数千万円~数億円 |
弁護士秘書やパラリーガルなどの弁護士以外の職種では、年収400〜500万円が多く、日本の平均年収は約433万円(参考:国税庁)より、若干高い見込みになります。
パートナー弁護士にまでなることで、年収数千万円も十分に可能で、案件の内容や数によっては年収1億円も超えていきます。
四大法律事務所ごとに年収の差はあまりない
四大法律事務所ごとの年収には、大きな差はありませんでした。
事務所ごとの年収差はないものの、役職や勤続年数、携わった案件のインセンティブによって違いがあるため、ご自身の実力や頑張り次第で年収を上げられると言えますね。
四大法律事務所に就職・転職する3つのメリット
入所することが非常に困難であることが前提ですが、四大法律事務所に就職や転職するメリットは主に次の3つが挙げられます。
- 年収が非常に良い
- 仕事を通して多くの経験ができる
- 強力な経歴を持てる
年収が良いことは言うまでもありませんが、それ以外にも数多くの経験ができ、四大法律事務所で働いたこと自体が大きな強みになります。四大法律事務所での経験がご自身のキャリアにも大きなプラスに働くことでしょう。
初年度から年収1000万円も狙える|年収が非常に高い
ここまでお伝えしたように、四大法律事務所の年収は非常に高く、入所早々に弁護士の平均年収1,000万円を超えてきます。
確かに激務であることは否めませんが、短期間で多く稼げるということは、自分の事務所開設や早期リタイアなど、今後の人生選択にも幅を持たせてくれますね。
また、パートナー弁護士として長く働くことになれば、年収数千万円以上の収入を得ることもできます。
仕事を通して多くの経験ができる
四大事務所で働くメリットは、年収だけではありません。様々な顧客や案件を対応することができ、その1つ1つがご自身を成長させてくれることになるでしょう。
四大法律事務所の取扱業務は、企業法務が主になりますが、取引相手には大手企業や銀行、海外企業なども多いため、世の中の根底から支える仕事に携わることもできるでしょう。
年収も大事ですが、自分の仕事が世の中に役立っていると感じられることは大きなやりがいです。さらには、規模が大きい仕事に挑戦ができれば、自分の成長に繋がります。その結果、役職も上がり年収アップもできる好循環が出来上がります。
強力な経歴を持てる
四大事務所はそもそも入所すること自体が難しく、働いたことがある経験が大きなアドバンテージになります。
四大法律事務所から他の法律事務所への転職は安易にできるようになるでしょうし、将来独立する際には、四大法律事務所で働いた経歴を武器に顧客を獲得していくこともできるでしょう。
四大法律事務所で採用されるために必要なスキル
非常に年収が高い四大法律事務所ですが、年収の高さに比例して入所できる難易度も非常に高く、優秀な人材が求められています。
毎年多くの方が応募しており、その中から一握りの人しか採用されません。優秀な学業を修めた人や弁護士としてのキャリアを積み重ねてきた人でないと簡単には入所できない覚悟が必要です。
四大法律事務所で就職・転職する際に求められる主な条件は以下のとおりです。
- 高い学歴
- 経歴や企業法務に関する高い知識
- 語学スキル
- 忍耐力や向上心
高い学歴
新卒で四大法律事務所に就職する場合、司法試験合格発表前に内定が決まることが通常ですので、学歴である程度の判断がされてしまうことが多いです。
次のような、日本でもトップクラスの大学を卒業していないと、そもそも書類選考すら通らないことも十分に考えられます。
- 東京大学
- 京都大学
- 一橋大学
- 慶応義塾大学
- 早稲田大学
- 名古屋大学
- お茶の水女子大学 など
学歴が原因で四大法律事務所に採用されないからと言って、大学で学び直すということも非現実的です。学歴に自信がない方は、弁護士として他の事務所で経験を積んだ後に四大法律事務所に転職する方法も検討してみてください。
経歴や企業法務に関する高い知識
中途で四大法律事務所に転職しようとしている方でも、高い水準が求められます。これまでの経歴や企業法務に関する知識は必ず確認されますので、担当してきた案件内容や数、法律事務所内での立場など、少しでも多くのアピールポイントを作っておく必要があります。
なお、四大法律事務所の中には一般民事に対応する法律事務所がありません。求められる経験・知識は知的財産や倒産などの企業法務に関する内容です。
これまでに一般民事の案件しか対応してきたことがない方は、先に企業法務案件を取り扱っている別の法律事務所を経由して経験・知識を積んだ方が良いと考えられます。
一般民事での大手法律事務所を目指している場合には、「ベリーベスト法律事務所」や「アディーレ法律事務所」などがあり、国内においては四大法律事務所に匹敵する規模の大きさです。
語学スキル
四大法律事務所で採用されるためには、語学スキルは必須です。四大法律事務所には海外拠点も複数あり、外国人弁護士も多数在籍しているので、日常業務から外国語を使用する機会があります。
最低でも英語スキルは求められ、TOEIC800点以上はマストで取得しておきたいところです。英語圏以外にも欧州や中国、東南アジアなど全世界に拠点や取引先がありますので、複数の言語を取得しておくことがアピールにもつながるでしょう。
忍耐力や向上心
四大法律事務所は、年収が高いぶん、仕事内容も激務で非常に高い知識や質が求められます。四大法律事務所で採用されることがゴールではなく、そこから学び直して日々成長し続けなくてはなりません。
ここまでお伝えしたような、四大法律事務所に求められる高い知識や経験をお持ちの方であれば、今までも必死に勉強を続けて向上してきたはずです。ただ、ここで終わりではない点は考え直さなくてはなりません。
意欲があまりない方からすると、とても大変な仕事に思えますが、意欲的な方であれば、周りも仕事内容も非常にレベルが高く、切磋琢磨しながら自分を高めていける環境にすることもできるでしょう。
まとめ
四大法律事務所は、日本国内で上位4番目までの規模を持つ法律事務所で、非常に高い年収であると断言できます。次のように入所1年目から1,000万円を超える可能性が高く、数年も働けば弁護士の年収を軽く超えます。
入所期間 | 年収(弁護士の場合) |
1年目 | 1,100万円~1,200万円 |
3年目 | 1,300万円~1,500万円 |
5年目 | 1,500万円~2,000万円 |
また、将来的に立場が上がることで数千万〜1億円以上の年収も十分に狙うことが可能です。
役職 | 年収 |
弁護士秘書 | 300万円~500万円 |
パラリーガル | 400万円~600万円 |
ジュニアアソシエイト弁護士 | 1,100万円~1,500万円 |
シニアアソシエイト弁護士 | 1,600万円~3,000万円 |
パートナー弁護士 | 数千万円~数億円 |
その反面、やはり優秀な人材が求められていることが事実で、学歴や経歴から高いレベルが求められます。
学歴や経歴に自信がない方は、一度企業法務系の法律事務所で知識・経験を磨いて四大法律事務所に挑戦する方法もあります。
一方で、四大法律事務所の募集・応募状況によっては、倍率が低くなっているチャンスのタイミングもあるでしょう。弁護士業界の転職事情に詳しい人物にサポートしてもらいながら、今できる最善の方法を見つけていきましょう。