結論から言えば、公認会計士の転職に年齢はさほど関係はありません。
少々古いデータですが、日本公認会計士協会が行った平成23年のアンケート結果によると、公認会計士として採用が決まった人たちのなかで、40歳未満であれば試験合格者の場合でも80%以上と積極的に採用されているようです。
[参考]日本公認会計士協会|組織(企業)内公認会計士に関するアンケート集計結果
逆に40歳以上だと、試験合格者の採用は0でした。公認会計士として登録されている場合であれば、40歳以上でも実に3割近い会社が採用を決めています。
実務経験においては3年以上の経験をしていれば80%以上が採用としています。実務経験というのは公認会計士としての実務のことではなく財務経理の事ですので、例え40代以上の試験合格者でもチャンスが0というわけではありません。
ただし、やはり年齢を重ねるにつれ経歴が大切になっていくことも事実です。
公認会計士として登録するためには2年以上の実務経験が必要ですが、実務従事の場合、企業法人の原価計算等の財務分析に関する事務も要件に含まれています。
ご自身の経歴が要件に合致していないか、確認してみましょう。
目次
公認会計士試験合格者の平均年齢は20代
金融庁が発表する公認会計士試験結果によれば、令和2年の合格率は10.1%となりました。
合格者の実に8割以上が20歳以上30歳未満の若い世代です。
年齢を重ねるごとに合格者数は減っていきますが、合格率はというと、35歳以上になるとそこまで大きな変化はありませんでした。むしろ、35歳~40歳未満の合格率が3.8なのに対して、45歳~50歳未満の合格率は4.2%と、若い世代を追い抜いています。ちなみに本年の最高齢合格者は61歳でした。
注目すべき点として、合格者こそいなかったものの、65歳以上の出願者数が99件もあるということです。
公認会計士になるのに年齢は関係ありません。61歳でも公認会計士試験を突破し、その資格を活かしてキャリアを積み上げている人もいます。チャレンジはいつでも決めたときからできるのです。
公認会計士になるメリット
公認会計士として転職する場合、大きなメリットは2つあります。1つはIPOの経験ができる可能性があることと、最新の会計・監査基準に触れていられることです。
IPOは一定の会計基準をクリアしている必要があり、このため公認会計士の支援が必須となってくる場面です。クライアント企業との打ち合わせや細かな監査、基準に満たない場合のコンサルティングや上場に向けたアドバイザリーなど、幅広い業務を経験できます。
また、このためには最新の会計基準をしっかりと学ぶ必要があります。このため、会計事務所に所属している時点で、常に最新の情報をキャッチアップできる環境に身を置くことが可能になります。
会計事務所ではなく一般の事業会社でも、公認会計士としてIPOの経験は可能です。上場を目指すベンチャー企業のCFOや経理部長等になることができれば、上場前に財務経理を整備しておく必要がありますので、重宝されます。
また、すでに上場を果たしている企業の場合でも、やはり公認会計士の存在は大きいです。経理部長などの役職だけでなく、以下において公認会計士のスキルが必須となります。
また、金融機関、証券会社等では融資業務等でも活用できます。
また現在公務員として勤めているような場合も、公認会計士資格は大きな武器になります。公務員内部にも決算業務や財務管理・内部監査などの業務は存在しますし、税務局などでは会計検査・税務調査といった業務もあります。
どのようなキャリアを歩みたいかにもよりますが、公認会計士資格はどのキャリアでも決して無駄になることはありません。
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公認会計士の年齢別働き方
現在の年齢ごとに、公認会計士試験合格へのプランと、合格後のキャリアプラン例をご紹介します。あくまで一例ですが、実現可能性の高いプランとなっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
新卒から20代の場合
成人前から公認会計士を目指す場合、方法は2つあります。1つは会計専門職大学院に進学し、徹底的に会計を学ぶことです。会計専門職大学院で一定の単位を修了すれば、公認会計士試験の一部の科目(財務会計論・管理会計論・監査論)が免除になる可能性があります。
高卒で社会に出て働いているという方でも、一部の会計専門職大学院では社会人専用コースを設けている場合もあります。お財布・時間と相談して通うことも可能でしょう。
すでに大学生として学校に通っている場合は、専門学校等のダブルスクールをするか、資格取得のためのスクールを受講するなどが可能です。仮に未成年のうちに公認会計士試験に合格した場合、様々なキャリアパスを描くことが可能です。
例えば、
- キャリア官僚を目指して公務員試験に備える
- 大手の金融機関や証券会社に新卒として入社する
などです。
他にも、会計事務所やコンサルティングファームなど、試験合格者は引く手あまたです。なお、日本公認会計士協会の組織(企業)内公認会計士に関するアンケート集計結果によると、全年齢の試験合格者採用時の年収は、500万以下が37%、750万以下が51%でした。
試験合格者といえども、3年は実務経験が必要になりますので、入社当初の年収にはあまり期待しないほうが良いでしょう。
20代~
成人してから公認会計士を目指す場合のケースは、学生中に目指すか、社会人になってから目指すかで大きく変わっていきます。学生のうちは、10代から目指すケースとあまり大きくは変わりません。学業と両立しながら公認会計士試験を目指すとよいでしょう。
社会人になってから目指す場合、最初はかなりの覚悟が必要になります。社会人一年目というのは、仕事や社会人としてのマナーなど、様々な新しいことを身につけなければなりません。これらと両立しながら勉強をしていくことになります。
おすすめは、社会人一年目は簿記を取得することです。簿記1級まで取得できれば、公認会計士試験の科目の一つ、財務会計論の一定の範囲をカバーできます。また、公認会計士試験の科目は、ほぼこの簿記の概念がベースとなります。1級を取得しているのとしていないのとでは、効率が大幅に変わってきます。
簿記1級の勉強時間目安は600時間といわれています。公認会計士を目指すには3,500時間必要といわれていますので、勉強をするという習慣を作るという意味でも、土台となるでしょう。
公認会計士試験に合格した後は、様々なキャリアが望めます。公認会計士事務所に入社していたのであれば、そのまま経験を積んで登録しても良いでしょう。また、一般企業の財務部・経理部に転職しても、一定の要件を満たせば登録可能です。
経験を積んだ組織で上を目指すこともできますし、ハイクラス転職をしてポジションを獲得することも可能です。
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30代~
30代かつ経理系の未経験者の場合、仮に公認会計士試験に合格していたとしても、大手の会計事務所に転職するのはラストチャンスと考えてよいでしょう。
日本公認会計士協会の組織(企業)内公認会計士に関するアンケート集計結果によれば、試験合格者の採用年齢において、36歳以上で採用率は大幅に下がり、40歳以下になると0%になります。
経理系の経験者の場合でも、公認会計士として登録されていなければ難しいと思われます。ただし、原価計算などの会計業務に従事していた経験が通算3年以上あれば、公認会計士としての登録要件を満たすことができます。ご自身の業務内容を振り返り、申請してみる事をお勧めします。
また、財務・経理の仕事をしたことがなくても、例えば経営企画といった経営層に近い場所で仕事をしていた経験があれば、それは大きなアピールポイントになります。
また、独立をするのであれば年齢は関係ありません。もちろん公認会計士として登録していたほうが箔がつくことは間違いありませんが、世の中の独立したコンサルタントには無資格者が多いことも事実。試験合格者として公認会計士の専門知識を活かし、コンサルタントとして独立することも可能です。
40代~
40代になると大手の会計事務所への転職は、公認会計士として一定の経験を積んでいないと難しくなります。前述のとおり、日本公認会計士協会のアンケートによれば、40代以上の試験合格者は採用が0%でした。
仮に40代で経理系未経験、試験合格者のケースでキャリアプランを立てる場合、まず一番は原価計算などの業務を行える部署への移動や転職をしましょう。要件を満たせば公認会計士として登録が可能になります。
また、現在勤めている会社が上場を目指す中小ベンチャーの場合、試験合格者としてIPOを担当することもできるかもしれません。IPOは監査が必須となるため、外部の会計事務所との連携が必要になります。その際に試験合格者がいるだけでスムーズになります。
50代~
50代にもなると、例え試験合格者であったとしても未経験での転職は難しいものになります。この年代の求人票は一部のハイクラス転職しか存在せず、ほとんどが公認会計士としての募集になっているのが実情です。
一般企業で財務経理を経験しマネージャークラスの役職を得ている場合、試験合格者としてハイクラスの転職で有利になる場合があります。
ハイクラス転職は、マネージャー・CXO相当の役職を前提とした求人です。当然待遇は期待できるものになりますが、ライバルの質も非常に高いため、しっかりとアピールポイントを整理しておきましょう。試験合格者というのも武器にはなりますが、数あるうちの一つ程度の認識でいたほうが無難です。
ハイクラス転職を目指す場合、エージェントをしっかり選び協力を仰ぐことをお勧めします。
公認会計士・試験合格者におすすめの転職エージェント
どの年代であってもそうですが、特に30代以上で公認会計士へ転職したい場合は、エージェントの利用がおすすめです。おすすめの転職エージェントと転職活動のコツを紹介していきます。
マイナビ会計士
マイナビ会計士は、転職サイト大手マイナビが運営する公認会計士専門の転職サイトです。日本の公認会計士・試験合格者のほか、米国公認会計士(US CPA)の転職に特化したコンサルタントが、転職をサポートしてくれます。
非公開求人が全体の求人のうち8割を占めており、公開している求人票は800件以上を合わせると、まさに業界最大級の求人数を誇ります。サポート体制も充実しており、マイナビ公認会計士のキャリアアドバイザーと面談をした方の実に95%が高い満足度を得たと回答しています。
満足度の秘訣は、転職者の魅力を徹底的に引き出すリサーチ力とアドバイスサポート力です。マイナビ転職・マイナビエージェント・マイナビエグゼクティブエージェントなどの媒体を持つマイナビだからこそ、企業が欲している人物像をしっかりと把握しています。
転職者のこれまでの歩みを徹底的に分析し、職務経歴書や面接対策を万全に練りこむことで、希望する企業への転職を成功させる確立を極限まで高めてくれます。
公式サイト:https://cpa.mynavi.jp/
ジャスネットキャリア
ジャスネットキャリアは会計・税務などの分野専門の転職エージェントサービスです。所属するコンサルタント自身が公認会計士を目指していたこともあり、業界に精通したプロフェッショナルなサポートが期待できます。
ジャスネットキャリアの公式HPによれば、取引実績5,000社を超えるとしており、保有する求人情報の99%が非公開求人としています。
非公開求人は一般的には世の中に公開されていない求人情報のことで、事業戦略に直結した人材を求めているものもあります。このため、一定程度のキャリアが求められることがありますが、そうした条件を満たした方であれば、相場よりも良い条件で転職先が見つかる可能性もあるでしょう。
公式サイト:https://career.jusnet.co.jp/
ビズリーチ
ハイクラス転職専門の転職サービスであるビズリーチ。取り扱う求人は即戦力を前提としたものが多数で、2021年11月時点で公認会計士の公開求人情報は583件になります。その中には日本国内だけでなく、海外企業の求人情報も含まれています。
使用するデメリットとして、ビズリーチは登録後の審査が必要になります。ヘッドハンターからスカウトが届く仕組みになっているので、一定の水準をクリアしている必要があります。
ただし、ハイクラスではなくても20代で「登録・スカウトが来た事例」などもあるようですので、転職を考えている方は一度登録してみてはいかがでしょうか。
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
AMBI(アンビ)
AMBIは20代向けハイクラス求人を扱うエン・ジャパンの転職サービスです。取り扱う求人情報はすべて年収500万円以上。仕事の内容もそれに見合った高度な内容のものが多く見受けられます。
AMBI独自のサービスに、マイバリュー診断というものがあります。求人に「興味がある」というボタンを押すと、ヘッドハンターやその企業の採用担当者が、プロフィールや職務経歴書をチェックし、合格可能性を3段階評価で通知してくれるのです。
応募する前にこうした情報を知ることができるので、無駄な時間を使わず、効率的な転職活動が可能です。
公式サイト:https://en-ambi.com/
会計士への転職成功のコツ
会計事務所への転職は基本的に即戦力が求められる傾向が強く、公認会計士として転職をする場合、年齢によってアピールすべきポイントや揃えておくべき内容が異なります。
20代の場合、試験合格者というだけで有利になることもあるでしょう。科目合格だけでも期待をもって対応してもらえる可能性があります。
35歳以上になると前職の経歴が3年以上だったり、実務経験の有無やその内容について見られることが増えていきます。転職の理由がキャリアアップなのか、キャリアチェンジなのかで話は変わってきますので、希望する事務所の傾向や自身のキャリアをしっかりと分析しましょう。
例えばキャリアアップの場合であれば、一定の事業規模の会社からプロの道に進みたいと考えるケースであれば、公認会計士としての適性が認められやすいです。
一方のキャリアチェンジの場合、試験合格に加え英語やその他の技能も求められる可能性があります。特に近年は海外と取引のある企業が増えているため、公認会計士も英語が必須となりつつありますので、試験後は英語の学習を進めておくとよいでしょう。
まとめ
転職をする場合でも、公務員として勤めあげる場合でも、様々なキャリアへの道を開いてくれる公認会計士資格。取得するためには難関試験を突破しなければなりませんが、それでもチャレンジする価値は十分にあります。
公認会計士試験を目指すのは、いつからでも遅くはありません。思い至ったら即行動。それこそが自身のキャリアを切り開くカギとなるでしょう。ご自身の年齢からキャリアを逆算し、リスクとメリットを比較してしっかり計画を立てましょう。