企業のコンプライアンスの重要性が高まってきている今、法務部での仕事の重要性も高まってきています。
ただ、法務部は会社に関わる法律関係の仕事をしているという認識はしていても、具体的にどのような仕事をしているかというイメージが明確にできる人は少ないのではないでしょうか。
そこで、この記事では、企業の法務部はどのような仕事を行っているのか、法務部で仕事をするうえで求められるスキル、法務部に転職するときに役に立つ資格などを詳しく解説していきます。
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目次
法務部の主な仕事内容7つ
まずは、法務部の具体的な仕事内容についてご紹介します。
取引先との契約書類を確認する
法務部の代表的な仕事内容と言えるのが、取引先との契約書類等を確認するという仕事です。企業が、他の会社と取引をする際、業務委託契約書や売買契約書などの様々な契約書を作成しますが、後々トラブルにならないよう、また、トラブルになった際に自社に不利にならないよう、事前に契約書の内容に問題がないかを確認するという業務です。
社内規定・コンプライアンスの整備
社内規定でコンプライアンスの整備も法務部での重要な仕事です。
企業には、就業規則や賃金規定などの社内規定が存在していて、これらの社内規定を法務部で作成したり整備したりします。社内規定は企業が独自に定めるものですが、労働法などの法律に反していないか、事業の健全さを社外に示せる内容かどうかをチェックするのです。
法律に関する社内相談窓口としての対応
社員からの法律に関する質問に答えることも法務部での仕事内容です。例えば、営業部が取引先の氏名や連絡先を扱う時に個人情報保護法に違反していないか疑問に思ったときに法務部が相談に対応するのです。
また、セクハラやパワハラなどの問題が社内で起きている場合に相談に対応することも法務部での重要な仕事です。
適宜必要な法的手続きの対応
子会社を設立したり、上場を目指したりする場合に必要になってくる法的手続きの対応を行うのも法務部での仕事です。法的な手続きが必要になったり、法律の知識が求められる作業が出てきたりした場合に、税理士や顧問弁護士、経営陣らと相談しながら対応を進めていきます。
顧客や取引先、社内でのトラブル対応
顧客から自社商品や従業員の対応に対してクレームを受けた場合や、取引先とのあいだでトラブルが起こった場合、法務部が訴訟対応などを行いトラブル解決に尽力します。
トラブルが起きた際に、社内での内情をまとめて現状を把握し、会社法などの専門的な法律の知識を用いて、自社への不利益が大きくならないよう対処するのが法務部での仕事です。
顧問弁護士とのやりとり
契約書を作成したり、社内規定を定めたりする際、法務部の担当者が単独で行うことはなく、通常は顧問弁護士に相談しながら進めていきます。
顧問弁護士という法律の専門家からの意見やレビューを得ておくことで、取引先や顧客からの信頼を得やすくなるため、顧問弁護士とのやりとりをしながら業務を進めていくことも法務部に求められていることです。
事業成長の助言|バックオフィスから支える
事業を成長させていくためには、攻めの姿勢と守りの姿勢が重要になります。売り上げを上げるために営業部が舵を切っていくことが多いですが、法務部は会社がリスクにさらされないように守りの姿勢でバックオフィスから会社を支えていきます。
事業をより一層成長させていくために、法務部がリスクヘッジという観点からアドバイスする場面も出てきます。
法務部に求められる役割と企業にとっての存在意義
法務部での具体的な仕事内容を見ていく前に、会社にとって法務部はどのような存在なのか確認していきましょう。
基本は会社のストッパー|予防法務的なポジション
法務部は攻めと守りでいうと、守りの役割の部分が大きいと言えるでしょう。社外や社内での法的なトラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した場合に迅速に解決するために適切な処置を行います。
法律を武器に、企業活動のリスクヘッジをするようなポジションです。
営業サイドとの関係性について
ほとんどの企業で営業部が存在しますが、その営業部との関係性で見ていくと法務部が会社においてどのような存在なのかわかりやすいかもしれません。
営業は、利益率が何パーセントになるかよりも、「売れるか・売れないか」を重視しがちです。利益率が多少下がっても売り上げを1円でも多く積み上げたいと思うのが営業です。
一方で、法務部は、極端に値段を下げて売られても、利益率が何%以上ないと会社の赤字リスクがあるため「●●円以下では売ってはいけない」などという社内ルールを設けるなどして会社を赤字リスクから守ろうとします。
そのため、双方会社のことを考えて起きる衝突ではありますが、営業と法務部での戦いが起こることも多いのです。
社内のコンプライアンス意識向上を担う
近年、企業にとってコンプライアンス(法令遵守)が重要になってきています。法務部には社内での適正な体制や組織作りを行うという役割があり、社内規程を定めたり、コンプライアンスに関する社内研修や教育を行ったりすることで、社内での意識を上げていくことが求められています。
上場を狙う場合は社内で音頭を取る
上場を狙っている企業の場合は特に法務部の重要性が大きくなります。上場企業において、コンプライアンスや内部体制の健全化は必要不可欠なため、法務部が積極的に社員たちをリードしていく場面も多くなります。
普段、守りの姿勢が多く見られる法務部ですが、上場を控えている企業では攻めの姿勢がより求められると言えます。
法務部の人材に求められる6つのスキル
法務部は未経験でも転職できる部署であることはすでにお伝えしましたが、採用されるためには法務部に求められているスキルを備えていると判断してもらうことが重要になってきます。
法務部での仕事をこなすためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
もっとも必要なのは経営視点
法務部の担当者に最も求められているのは、経営者の視点です。経営者同様、リスクヘッジを考えながら事業を発展させていくためにどのようなことが必要なのかを常に判断することが求められます。
法律関連の知識と業務で会社を守りつつ、事業成長をさせるためにどうしていくべきかという経営視点が法務部のスキルとして最も求められていることだと言えます。
ある程度の法律の知識
法務部の仕事には、法律知識が必要不可欠です。企業の法務部が正しい法律知識を持っていなければ、取引においてトラブルが起きてしまうリスクが出てきますし、法的なトラブルに対処することや法令遵守のための対応を行うことができなくなってしまいます。
ただ、契約書の作成やコンプライアンスの整備など最終的には顧問弁護士にお願いする形になりますので、完璧な法律の知識というよりも、ある程度の法律の知識を幅広く知っておくことが求められていると考えていいでしょう。
自社の業界知識
法律の知識だけでなく、法務部では自社の事業内容や、業界知識を持っておくことが求められます。
自社の事業内容や業界の情報、常識などを踏まえて、法律に触れずに安全に経営を行いながら事業を拡大していくためにアドバイスをしていくのが法務部に求められています。
コミュニケーション能力
法務部は法律関係の業務を行っているのであまり誰かと頻繁にコミュニケーションを取ることはないと思われがちですが、取引先とやりとりをしたり、自社の社員から法律に関する相談を受けたりとコミュニケーションを取る場面は多いのです。
特に、取引先と契約書関連でやり取りをする際は、一方的に自社を守るための主張をするだけでは、交渉はうまく進まないので、相手の意見をヒアリングする能力や交渉していくスキルも必要になってきます。
英語力(場合によっては)
海外企業との取引がある会社や外資系企業では、英語での法律関連の交渉をする場面もでてきます。英語で書かれている契約書を読み込んだり、取引先の主張を正しく理解したり、英語で自社の主張を伝えたりする可能性もあるため高い英語力が求められる場合があります。
ただ、その分高い年収を狙いやすくなるというメリットもあります。
学び続ける向上心
法務部が取り扱う問題は、いつも必ず正しい答えがあるというケースだけでなく、それぞれの取引内容や関わる人物によって適切な対応が異なってくることがあります。
また、法律がまったく変わらないということはなく、変化する法律や裁判例などについての知識を日々アップデートしていく必要があります。
法務部には経営者としての視点が求められているため、学び続ける向上心が求められているのです。
法務部に向いている人の特徴
法務部の仕事が向いている人は、法律と会社の利益をバランスよく考えられる人です。
法務部の人間は、あくまでも企業内の立ち位置なので、社員として会社の利益を最優先させなければいけないポジションにあります。一方で、無用なトラブルを開始したり、利益率を無視するような行き過ぎた営業を止めたりする、ストッパーとしての役割も担っています。
そのため、企業の利益を追求しつつも法令遵守でリスクマネジメントしなければならないというバランスが必要になります。どちらか一方に偏ることなく、バランスよく物事を考え、実行できる人が向いているでしょう。
法務部の仕事のやりがいと大変なこと
法務部は会社にとって重要なポジションであり、近年特にその重要性が増していますが、実際の仕事のやりがいや大変さはどこにあるのでしょうか。
やりがいと楽しさ
法務部での仕事のやりがいは、経営陣と一緒に会社全体のことを考え、経営の視点を持ちながら事業を進めていけることでしょう。経営陣との距離が近いことで、法務部で仕事をすれば会社を俯瞰的に見られるようにもなります。
また、営業やマーケティングなどの社内のさまざまな部署の仕事を、法律の面からしっかりとサポートしていけるのも醍醐味の一つです。売り上げをあげるための契約書を作成して営業をサポートしたり、顧客からクレームが来たときに法律の知識で速やかに解決したりすることで、法務にとってのやりがいを感じることができるでしょう。
大変さと辛さ
大きなやりがいがある一方で、法務の仕事には大変さもあります。それは、自社の社員からの理解を得にくい場面が多いということです。たとえば、契約書の確認をする際、リーガルチェックを行わなければならないので、時間がかなりかかってしまうことが多いです。しかし、営業は一刻も早く契約を結びたいと思ってしまいますので、しばしば法務部と対立してしまいます。
また、トラブルを防ぐために契約内容を指摘したり、修正したりする際、法律の専門知識がない社員にわかってもらえるように説明するのも難しいため、理解してもらえないことも多く、大変な思いをすることも出てくるはずです。
法務部の年収は350万円〜700万円|外資・上場企業なら1,000万円以上
法務部は法律に関わる専門的な業務を行っていますので、年収も高くなりそうというイメージをお持ちの方も多いですよね。
実際に、法務部の年収は平均すると350万~700万円ほどとなっています。経験年数やマネジメントレベルによっても年収は上がっていきますし、有名企業や外資系の企業であればより高額な年収になります。
特に、外資系企業の部長クラスにもなれば年収2000万円~2500万円にもなると言われていますので、他の部署に比べて年収は比較的高いと言えるでしょう。
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未経験からでも法務部に転職できる?
「法務部の仕事に興味があって転職も考えているけれど、法務の経験がない!」という方もいらっしゃるかもしれません。
未経験からでも法務部に転職することはできるのでしょうか。
結論から言うと、未経験でも法務部への転職は可能です。求人によっては資格が不要というケースが多いです。
大企業においては、法科大学院修了生であれば実務経験がなくても採用されるケースが多いですし、大企業の場合、社内研修制度が充実しているので、入社後に法務の専門家になっていくことができるので、ある程度の法律の知識や素養があればいいとされることもあります。
ただし、転職の成功率を上げるためには法務部での仕事に近い経験があることや、資格を持っていることが有利になりますので、転職する前に資格を取っておくといいでしょう。
求人例:法務(世界シェアトップクラスの安定基盤/年間休日121日)
グループの法務に関わる業務をお任せします。静岡では全国にある拠点への事業部門支援(契約審査、適法性検討など)が中心。東京の拠点では、国内子会社への法務に関する支援全般を担当いただきます。各業務の流れは、一般的な法務と同じです。他社での経験をしっかり活かしていただけます。
【業界経験不問】法務に関する実務経験をお持ちの方
※静岡勤務の方は未経験でも可【大卒・高専卒以上】
【必須要件】
■法務に関する実務経験をお持ちの方
※静岡勤務の方は未経験でも可
参考:doda
法務スタッフ※未経験歓迎/有名アーティスト多数所属/安定基盤
勤務地 本社 / 東京都港区六本木6-2-31 六本木ヒルズノースタワー12階 ※転勤はございません
給与 年俸 280万円~460万円 ※上記金額には月40時間相当※経験・能力を考慮の上決定
参考:Ms-agent
法務部で仕事をするためには?
法務部で仕事をするためには法学部を卒業するしかないのかな?と思っている人もいるでしょう。
どうすれば法務部での仕事に就けるのでしょうか。
必ずしも法学部を卒業している必要はない
確かに、法学部を卒業していれば、比較的スムーズに法務部に就職したり転職したりできる可能性は高くなります。しかし、法学部を卒業していなくても諦める必要はありません。法学部を卒業したほうが有利というだけで、他の方法で法務部での仕事に就くことは可能です。
法律に関する資格を取得する
法学部を卒業していないけれど法務部での仕事に就きたいという場合は、法律に関する資格を取得したり、司法試験に合格したりすれば、企業の法務部で働くことを目指せます。
法律に関連する資格は難易度が高く、簡単には取得できない場合や取得に時間がかかってしまう場合もありますが、法務の経験がない状態で目指すのであれば、資格を取ることを検討するのが近道だと言えるでしょう。
法務部で働く・転職する際に役立つ資格一覧
法学部を卒業していない場合や、法務の経験がない場合などで法務部を目指すには、法律に関する資格を取得することが重要だとお伝えしました。では、具体的にどのような資格があるといいのでしょう。以下に、法務部での仕事をするために役に立つ資格をご紹介していきます。
弁護士
弁護士資格は、国家試験である司法試験に合格すると取得することができます。法学部を卒業していない場合は、誰でも受けることができる司法試験予備試験を受験し、合格することで司法試験の受験資格が得られ、弁護士資格を目指すことができます。
ただし、司法試験予備試験は合格者数が少なく狭き門なので、法学部を卒業して法科大学院に進むほうが確率が高いと言えます。
公認会計士
公認会計士の資格は、企業の監査と会計を専門分野とする国家資格です。国家資格にはたいていの場合受験資格が必要になりますが、公認会計士の資格は受験資格が必要ないので、「公認会計士になりたい」と思えばだれでもチャレンジすることができます。
弁理士
弁護士資格は毎年1月に1回行われる弁理士試験に合格し、弁理士登録することで得られる資格です。
弁理士の資格は比較的難易度が高い資格ではありますが、特許や知財の専門家ではない一般のサラリーマンが仕事をしながら勉強を両立させて合格しているケースが多いので、やる気さえあればしっかりと取得できる資格だと言えるでしょう。
ビジネス実務法務検定
ビジネス実務法務検定とは、企業が求める、ビジネスのシーンで必要とされる実践的な法律知識を身につけることができる試験で、法務部で仕事をしたい方にとってはぜひ取っておくべき資格です。
幅広い法律知識を身に付けられるビジネス実務法務検定は、活かせる範囲が非常に広い検定なので、他の業務をする際や法務部以外の職種に就くときにも役に立つでしょう。
知的財産管理技能検定
知的財産関係の国家資格で、知的財産に関する知識があることの証明をすることができる資格です。知的財産管理技能検定を持っているだけでは、少々アピールが弱いかもしれませんが、比較的他の資格に比べると取得しやすいものなので、手始めに取ってみるのもいいかもしれません。
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まとめ
法務部は法律の専門知識を活かしながら、社内のすべての部署に対して法的なサポートをし、社外の取引相手とのトラブルを未然に防ぐことが求められている立場です。
法務部で働く人には、企業の利益を追求する「攻め」の姿勢と、法的に会社のリスクヘッジを行う「守り」の姿勢の両方が求められ、ちょうどいいバランス感覚が必要とされます。法務部の仕事は難易度が高く、転職の際もハードルが高いですが、未経験でも採用される可能性は十分にあります。
法務部への転職の際、不安が大きいという場合は、転職エージェントに相談してアドバイスをもらうのもいいでしょう。興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
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